日本はいよいよ少子高齢化で、「人生100年」時代のため高齢者人口が異常に膨らむ社会が実現する。つまり、いわゆる「現役」というものも、どうやら拡張して考えなければいけないらしい。
明治安田生命保険では、定年を今の65歳から70歳に延長する方針を明らかにしている。27年から保険の営業社員1万人を対象に検討中で、金融大手では初のことだという。お堅い業界が動いたことで、この動きは一気に社会に広がるかもしれない。何せ世の中は景気は好ましくない上に人手不足で、とにかく人材で活用できるものは何でも使おうという流れにあるのだから。
「この『70歳定年』は、近いうちに実現するだろうとは見られていました。5月23日に開催された経済財政諮問会議では、十倉雅和経団連会長が、高齢者の定義を見直して70歳にすべき、との発言を行ったことから世間がザワついたという経緯があります。来年は5年に一度の年金制度見直しの年ということもあって、小沢一郎さん(立憲民主党)などはXで、『年金は80歳からと言い出しかねない』と、こうした動きを牽制していましたが」(経済ジャーナリスト)
この「高齢者の定義」という言葉は世間にインパクトを与え、SNSでは「いつまで働かせるんだ」といった否定的な意見が上がった。とはいえ、一方では「人生100年」時代で、確かに「老後」の時間は以前より長くなった。となれば、心身ともに健康でもっと長く働きたいという人もいれば、金銭的な事情から体が動くうちはなるべく働きたいという人も出てくるだろう。
これと同時に言われているのが、「老後資金4000万円」問題だ。やはり100歳まで生きるとしたら、80歳ぐらいまでを限りに見ていた人生を見直さなければならない。そこで寿命が延びた分だけお金も必要というわけで、以前は「2000万円」と言われた老後資金も、4000万円が必要になるというわけだ。
そしてこの「4000万円問題」をマンガにしてホームページで掲載。前面に打ち出しているのが、明治安田生命なのだった。
「『資産運用と老後4000万円問題…!』というタイトルのマンガなのですが、正式な注釈として、女性が平均年齢の88歳まで生きてゆとりある老後を送ろうと思ったら、年金と必要なお金の差は月14.1万円あって、65歳で引退した場合の88歳までの23年の時間をかけると、3892万円が不足するという計算が掲げられています。そして4000万円に備える方策として、イデコとNISAと積み立てタイプの生命保険の3つが有力との結論に読者を導く。『おいおい、他にも投資手段はたくさんあるだろうと』とツッコミを入れたくなりますが、そこは生保の宣伝マンガですから、そんなもんだろうと(笑)」(同)
そんなことから同社が先駆けて「70歳定年」を導入すれば、「やっぱりね」と妙に納得せざるを得ない。そこには政治と財界の意向というものがあり、定義などは必要なく、回りまわって自社商品の売り込みになれば良いというわけなのだ。
(猫間滋)