ドコモ「スマートライフ事業」拡大に見る“非通信事業”へのシフトチェンジ

「コロナ禍の今年は多くの上場企業が早期希望退職制度を募集、『セカンドキャリア支援』といった聞こえの良い制度を導入しました。結局はていのいいリストラですが、その数は90社に及び、リーマンショック以後2番目の高水準になっています」(経済ジャーナリスト)

 コロナという“黒船”が来襲して外圧がかかり、一気に事業の見直しと再編を迫られたからだが、ところがその一方、NTTドコモでは金融やコンテンツなどの「スマートライフ事業」を拡大、同事業に携わる社員を大幅に拡充し、23年度には最低で2500人、可能なら3000人にまで増やすという。

 なぜそうするのか。答えは「通信以外」の事業で稼ぐためだ。

 国内は人口減で携帯利用者のパイは減るばかり。ところが同じ外部要因でもこちらは菅政権の携帯料金値下げの外圧がかかって今後はさらなる値下げ競争が予想される。しかも、来るべき本格5G通信時代への設備投資は待ったなしの状況で、“入”に比べて“出”ばかりが膨らむ。であれば、何か他の食い扶持を探す必要がある。スマートライフ事業の拡充は、「通信」以外の事業で稼ぐという展望の表れかもしれない。

「KDDIは『じぶん銀行』の金融やau電気のエネルギーなど、携帯をプラットフォームにして生活需要につなげる『ライフデザイン領域』での売り上げを伸ばしています。ソフトバンクもグループのヤフーがEC事業で売り上げを伸ばしています。ドコモもdTVのコンテンツやライフスタイル、d払いなどの金融・決済サービスのスマートライフ事業を収益の第2の柱として伸ばしてきましたが、より一層の強化ということでしょう」(前出・経済ジャーナリスト)

 ちょうどトヨタがライドシェアの進展で車の販売台数減少を見越し、「脱・クルマ会社」を宣言、モビリティサービスに傾注しているのと事情は同じ。日本はもはや通信インフラだけでは稼げない社会になりつつある。

 となれば今流行りの“副業”で稼ぐ必要があるわけだが、携帯を起点として様々なサービスで顧客の囲い込みを狙うのは各社も同じ。携帯料金の“値下げ競争”と同時に、今後は副業でも火花を散らすことになりそうだ。

(猫間滋)

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