菅首相の公約「携帯料金引き下げ」で年間1兆円の国民負担減、携帯3社の生き残り策は?

 ドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯電話大手3社の21年4〜6月期決算が出そろった。3社はいずれも3月からアハモ、ポヴォ、ラインモの割安オンライン専用プランを相次いで投入したタイミングの決算だけにその結果が注目されたが、その結果はKDDIとソフトバンクは営業増益だったものの、やはり各社とも6〜700億円の通信料収入減を見込んだものだった。

「割安プランでは、アハモの契約者は180万件を超えてポヴォは100万件前後、ラインモは50万件を下回るとされています。各社の説明によると、メインブランドの顧客がそのまま割安プランやサブブランドのUQモバイルやワイモバイルに流れたようです。そのサブブランドも併せて値下げしたので、単純にそのまま収入が落ちた形ですね」(経済ジャーナリスト)

 となると各社の今後の課題はECやコンテンツ、生活サービスといった”本業以外”でいかに収入減をカバーするかと、法人契約を今後どう伸ばすかにかかっている。

 例えばKDDIとソフトバンクは「電気料金セット」をウリにしている。ラインモの契約者は前述のように50万件に満たないが、電気料金とセットの「ソフトバンクでんき」の累計契約者数は188万にも及び、前年同期比で45%も増加した。

 NTTは動画やスポーツライブ配信のコンテンツコマースや金融決済の「スマートライフ事業」で穴を埋め、KDDIも電気のセット以外でもフードデリバリーやヘルスケアを加えた”ライフデザイン領域”で「au経済圏」を拡大しようとしている。ソフトバンクのPayPayも方向性は一緒だ。

 これはもちろん菅政権が公約として掲げた携帯電話値下げの結果。総務省は6月に、5月までの新料金契約者が1570万件になって4300億円の国民負担減になったと胸を張り、この調子だと「年間で1兆円」の負担減との大風呂敷を広げたが。政府が出してくる試算は常にご都合主義にまみれたものなのでその真偽はともかくとして、携帯各社の決算数値を見れば確かに大きく負担減となったのは事実だろう。

 そこで今後、特に注目されるのが、5Gが本格的に普及した時にどう対応していけるか。5Gならではのサービス展開で、顧客獲得と1人当たりの売上金額(ARPU)をいかに伸ばせるかで、商機であると共に激しい競争に晒されるのは必至だ。

「現状を鑑みれば、5Gで倍になるとされるデータ利用料が増えれば割安プランやサブブランドだとデータ不足になって再び高額プランに顧客が回帰するという可能性もありますが、菅首相が続投ともなればそこを狙いに更なる値下げ案をゴリ押しして国民ウケを狙ってくるでしょう」(前出・ジャーナリスト) 

 さらにはドコモは親会社のNTTとNTTコミュニケーションズの統合を控えていて、業界に及ぼす影響は測りしれない。

 11日に発表された楽天の決算では、楽天モバイルが累計契約者で442万件を超え、三木谷会長は「500万件も視野」と堅調を誇った。

 22年は全社が営業増益を見込んでいるので、儲けた分だけ利用者にメリットをもたらしてくれれば良いのだが。

(猫間滋)

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