「公正な競争を通じて低廉で多様な料金サービスを提供することで、利用者に安くなった実感が伝わることが重要だ」
携帯料金値下げの旗振り役、武田良太総務大臣がこう述べたのは12月8日の閣議後の記者会見でのこと。値下げに踏み出す携帯会社の動向に注目が集まっている。
すでに先手を打っていたNTTドコモは12月3日に新料金プラン「ahamo」を発表。同プランは月額20GBのデータ通信に加え、1通話あたり5分間の無料通話がセットになって月額2980円という破格の安さだが、これに携帯業界が震え上がっているという。
「政府から携帯料金値下げの強い要望が出される中、ソフトバンクとKDDIはサブブランドで割安プランを発表しましたが、ドコモはメインブランドで、しかもソフトバンクとKDDIサブブランドの割安プランよりもさらに安いプランを出してきましたからね。『ahamo』が発表された翌日には大手キャリアのひとつである楽天の株価が大幅に下落するなど、その衝撃の大きさを物語っていました。やはり、今回のドコモの新料金プラン発表で一番の衝撃を受けたのは、格安スマホ会社ではないでしょうか」(経済ジャーナリスト)
格安スマホ(MVNO)は大手から回線を借りて通信事業をおこなっており、通信が混雑する時間帯には速度が低下するなどのデメリットもあるが、回線の設備費用がかからないため、格安料金プランを提供できるというカラクリがある。しかし、「ahamo」はそうしたMVNOよりも安価な価格設定となっているのである。12月4日にはMVNO事業者の日本通信が月16GB(のちに20GBに増量)のデータ通信で1980円という「ahamo」を上回る超激安プランを発表したが、今後大手キャリアが値下げ合戦を始めれば、経営基盤が弱いMVNOは駆逐されてしまう可能性も否定はできない。
「とにかく衝撃的な『ahamo』ですが、注意点もあります。もともと同プランはサブブランド用に作られたと見られていて、@docomoのキャリアメールが使用できず、ドコモの契約年数がリセットされたり、ファミリー割引から除外されたりと長年ドコモを使っているユーザーとして乗り換えづらい側面もあり、どれだけのユーザーが新プランに移行するかは不透明な部分もあるのです。ただ、いずれにせよ『ahamo』が携帯業界に大きな変革をもたらすことは間違いないでしょう」(前出・経済ジャーナリスト)
ドコモ以外の事業者はどのような手を打ってくるか。
(小林洋三)