楽天モバイルの「月額0円」が7月に終了することで、怒りの声もあれば「所詮は分かっていたこと」と冷めた見方もあって、いずれにしても当たり前だが喜ぶ声は聞こえない。タダだったのが有料になるのだから、恨み節になってしまうのはどうしようもないだろう。
「0円終了」が発表された直後に、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯大手3社のオンライン専用の格安プランの公式ツイッターが、まるでこれをあざ笑うかのようなツイートをしたことで話題になっている。
「ahamoしか勝たん」(ドコモ)、「ご唱和ください。そこはpovo〜♪」(KDDI)、「モンモモ、ラインモ♪ ずーーーっと990円 ほんとに、ほんとだよ!」(ソフトバンク)
ソフトバンクの「ず——っと」「ほんとに、ほんとだよ!」という部分はかなりの当てこすりにも思えるが、当てこするだけのことはあった。楽天モバイルが「0円終了」を打ち出したのと同じ5月13日にこれら3社の22年3月期決算が出そろったのだが、こちらは料金値下げの影響がある一方、しっかりとした数字を残したからだ。
「KDDIとソフトバンクは増収増益で、ドコモは減収だったものの増益を確保しました。3社とも堅調だった理由は、生活やサービスの非通信事業が値下げ分を取り返す貢献を果たしたからです。菅義偉政権が行った『官製値下げ』は、公共の電波を利用している3社は利益を利用者に還元すべきとの発想からでした。だから大幅な値下げを強いられたわけですが、お上には逆らえません。そこで従来通りの通信料で稼げないのであれば、新たな食い扶持を作り出さなければいけません。それが非通信でした」(経済ジャーナリスト)
だからドコモはdポイントによるドコモ経済圏を構築し、KDDIは金融や生活インフラのサービスを提供し、ソフトバンクはヤフーでのECとPayPayでの決済機能といった分野に注力してきた。そこは楽天も同じで、というよりも楽天経済圏のECや金融サービスに顧客を引き込む呼び水としての通信分野への進出だった。だからこそだいぶ無理をしてでも「0円」を行ってきたし、有料に移行後の新料金プランでも、楽天市場でのポイント付与率がさらに1倍追加されるという楽天経済圏メリットも追加される。
「0円廃止の大きな理由の1つが、0円という破格のサービスで契約者が飛躍的に増えたものの、そのことで逆に人口カバー率を上げるためにKDDIから借りている回線のローミング支払いが過大になったからでしょう。タダより高いものはないはずでやっていたのだが、思う通りには事は運ばなかった。そういう意味で言えば、0円廃止を発表した楽天の三木谷浩史さんは『0円で使われてもぶっちゃけ困る』と本音を漏らしていましたが、通信を道具として見ている姿勢が垣間見られたというべきでしょう」(同)
楽天モバイルの「0円終了」で、同じ基本料金「0円」からスタートして、利用者の必要に応じてトッピングを加えるKDDIの「povo2.0」への乗り換えが進むのではないかと言われ、事実、楽天が「0円終了」を発表した翌日には早くも申し込みが集中して回線が混雑している。さてそのKDDIの髙橋誠社長は、13日の決算会見で「(基本料0円を)辞める理由がない」とご満悦。先のソフトバンクの当てこすりもキツいが、同じ「0円」で胸を張られるのも三木谷氏にとってはさぞかしキツかろう。
(猫間滋)