9月に入り、ロシアの“弟分”的な存在であるベラルーシで、日本人がスパイ容疑で拘束されていることが判明した。拘束されているのは50代男性で、ベラルーシとウクライナの国境付近の状況、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の状況について情報を収集し、軍事施設なども撮影していたとして、スパイ容疑に掛けられる可能性が指摘されている。
ベラルーシ国営メディアは「サムライの失敗」などと大々的に報じているが、幸いにも男性の健康状態に問題はないという。しかし、今回のような日本人が拘束されるケースは、中国だけでなく、世界に増える親中国で今後も起こる可能性を示唆している。
ベラルーシは一帯一路に好意的だけでなく、今年7月にはベラルーシ軍と中国軍が西部の都市ブレストで人質救出や実弾射撃などを目的とした合同軍事演習を実施し、中国が主導する反欧米連合である上海協力機構に正式に加わるなど、その親中度数が高まっている。また中国との間で経済関係の強化を狙っており、自分たちと対立する日本のスパイに情報を盗まれるとの警戒感があったはずだ。
そして、世界にはラオス、カンボジア、ミャンマー、パキスタンなど、中国から多額の財政支援を受け、それなしには経済成長ができないような国家が増えており、親中的な政策を進める国家が少なくない。
中国の習近平国家主席は、最近もアフリカ53カ国の首脳らを招いた国際会議「中国アフリカ協力フォーラム」を北京で開催し、総額7兆円を拠出する方針を打ち出したが、こういった国々とって一帯一路は国家プロジェクトであり、他国に情報などが漏洩することは避けたい。そして、日本企業の中にはこういったアフリカ地域に進出を強化する動きも広がっているが、今後、世界で親中国が増えれば増えるほど、中国の情報を収集しているという理由だけで日本人がスパイ扱いされるケースが増える恐れがある。
日本人はどこが親中国でどこが“反中”国かを冷静に識別していくことが重要になろう。
(北島豊)