国会議員にインスタグラマー…ロシア女性スパイのセカンドキャリアと「性籠絡テクニック」

 ロシアにはソ連時代のKGB(国家保安委員会)時代から、工作員を養成し西側などに送り込み、スパイ活動に従事させてきたという歴史がある。KGBの流れをくむのがFSB(連保保安庁)、SVR(対外情報庁)、GRU(連邦軍参謀本部情報総局)で、主に外国での諜報活動に従事するのがSVRだ。

「SVRはスパイ教育に長い年月をかけ、変装・偽装・格闘・暗号などの技術を叩き込みます。海外派遣される際は、外交官などとして入国させるほか、一般人の身分のまま民間企業に潜り込ませることも。特に、ロシアの女性スパイはその多くがモデルのような美人が多く、ファッションや芸能関係の仕事を隠れ蓑に要人に近づくケースもあるといわれます」(国際ジャーナリスト)

 一方、FBSは主にロシア国内で活動する防諜組織で、テロ防止や外国人の工作員に接近して情報入手するなどの活動にあたっている。現在、120万人のフォロワーがいる人気インスタグラマーとなったアリア・ローザは元FBS職員。ロサンゼルスを拠点に、「女」を武器に工作活動をしてきたテクニックを会員向けに伝授しているという。いかにターゲットに近づき、誘惑してトップシークレットを引き出してきたかという自身の経験がベースになっているというから驚きだ。

 ロシアの美人スパイとして記憶に新しいのは2018年7月、ワシントンのアメリカン大学に通う29歳の女子学生が、工作員として活動していた疑いで米当局に逮捕された事件だ。

「ワシントン在住だったマリナ・ブティナというロシア人女性で、2016年8月に学生ビザで米国に入国。大学で国際関係論を学びながら、米政府に大きな影響力をもつ利益団体『全米ライフル協会(NRA)』の行事に頻繁に参加していたことから当局が内偵し、工作活動をしていた疑いで逮捕・訴追されました」(同)

 このニュースは世界中で大きく報じられたが、特筆すべきは彼女が目的のために「女」を武器にしてきた点だ。米ニュースサイト「スレート」の当時の記事には、こんな記述がある。

《彼女はFSBと連絡を取っており、共和党員らを性行為で手懐けて操作し、さらに特別な利益団体に属する個人にも性行為で影響を与えようと試みていていた。いわばブティナにとって(性行為は)活動を進めるための最重要項目だったのだ》

 要は、自らの体を提供する代わりに要人との関係を築いてきたというわけだ。翌19年4月、禁錮1年6月の刑を言い渡された。

「驚くべきは、彼女は刑期終了後にロシアに強制送還されたのですが、帰国してロシアの国会議員となり活動しているのです。それまでのスパイ工作活動がプーチン大統領に評価されたのではないか、といわれています」(同)

 まるで映画のような生き様だが、現実の女性スパイは映画以上にしたたかなようだ。

(灯倫太郎)

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