5月30日午前、ロシアの首都モスクワを8機のドローンが同時多発的に襲った。タワーマンション高層部や集合住宅を破壊し、複数の負傷者も出た。
「5月22日にウクライナと国境を接する西部の州で戦闘が起きて以来、義勇兵を名乗るロシア人によるロシア国内への攻撃が続いていましたが、今回の攻撃はそれまでのものとは意味が違います。明らかに高級住宅地を狙ったもので、オリガルヒや政治家、政府高官が多く住む地域だからです。大統領公邸もすぐそばですからね」(外信部記者)
これにはプーチン大統領も怒り心頭に発したようだ。伝えられたところによれば、経済関連イベントを視察していたプーチン氏は、「明白なテロの証拠」としてウクライナの仕業であると断定。さらに「我々に何が出来るか見ていろ」とかなり強気の威嚇を行った。
同じ30日には、ウクライナの反転攻勢がいつ始まるのかと世界が固唾をのむ中、ゼレンスキー大統領自ら「(反転攻勢は)決定された」と、秒読み段階であることを明かしている。
互いに一歩も引くことなく、だが戦況は今後ウクライナ有利に傾きそうな情勢ということで、プーチン氏の「何が出来るか見ていろ」という威嚇の中身が気になるところ。結局、追い込まれた末に戦略核を使うのか…と不安がよぎる。
そんな緊迫した状況の中、プーチン氏による仕返しの一環だろうか、スウェーデンでロシアのスパイが見つかったという。スパイと言っても人ではなく、イルカだ。正確にはベルーガ鯨で、シロイルカと呼ばれるもの。見つかったのは29日のことなので、ドローン攻撃後に新たに仕向けられたものではない。
ではなぜ、イルカがスパイなのだろうか。
「同じようなイルカは2019年にノルウェーでも発見されています。体にカメラを取り付けるためベルトを巻いているのは今回と同じ。そしてこのカメラホルダーには『サンクトペテルブルクの装備品』と記載された帯があったことから、ロシア軍が行っている『海獣養成オペレーション』から逃れてきた軍用海獣ではないかと疑われたのです」(同)
もちろんそう推測するからには、それだけの根拠がある。そもそも「海獣養成オペレーション」自体がロシア軍で実際に行われてきたものだからだ。
ソ連時代の84年、ある海洋学者により海洋哺乳類を軍事目的で訓練をするための機密施設が作られた。施設が置かれたのが、ロシア科学アカデミーの管轄下にあるムルマンスク海洋生物学研究所で、実はまだ世間が平和な数年前まで、研究所の副所長が海外メディアに対して、魚雷探知や海中の侵入者を防ぐための訓練を、イルカのみならずアザラシやトド、オットセイなどにも施していることを語っていた。そこで訓練されたイルカであれば、カメラなどを装着した姿が発見されても納得がいくわけだ。今回はたまたま戦況が一気に動く中で発見されたので、大きく取り上げられたようだ。
さてこのイルカ、訓練されていたからだろう、非常に人懐こいという。18年に発見されたイルカも、エサをあげようとするとボート脇で「ちょうだい、ちょうだい」とばかりに口を空ける様子がYouTubeで見ることができる。
(猫間滋)