「中国スパイ気球」はやはり軍用 宇宙&サイバー戦部隊が操縦か

 中国がシラを切り通せる日も、そう長くは続かないかもしれない。
 
 4日、米サウスカロライナ州沖で、米軍機によって撃墜された気球について、日を追うごとに、さまざまな情報が判明してきた。
 
 6日に記者会見を開いた米北方軍のグレン・バンハーク司令官は、米領空に侵入した中国の偵察用気球の全長が約60メートルに及び、重さは1トン超だったと発表。機密軍事施設の上空を通過したことに対し「意図的」との見解を示した。
 
「スパイ気球の残骸は米東海岸沖合1.5平方キロメートルの範囲に散乱しており、艦艇や無人潜水艇を使い、米海軍が回収に全力を挙げている。作業にはかなりの時間を要すると見られていますが、ただし回収され次第、連邦捜査局(FBI)と協力して分析を進めるとしているので、『気象観測用』という中国側の主張が本当かウソかじきにハッキリするはずです」(全国紙記者)

 また同日には、米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官も記者会見で、気球にはプロペラやかじが装着されているため、速度や方向を変えることは可能だった、と説明。「民間の気象研究用が迷い込んだ」とする中国側の主張には矛盾があることを改めて強調した。

 とはいえ、全長約60メートル、重さ1トン超の気球をプロペラで操るとなると、相当の技術が必要だと思われる。9日の共同通信の報道によれば、この気球は中国軍内で宇宙やサイバー戦を担当する戦略支援部隊がその管轄・運用に関わっているというのだ。
 
「気球は政府直属の研究機関である中国科学院傘下の宇宙技術研究機関が開発した軍民両用の偵察気球で、表向きには『軍民融合』と謳っているものの、実態は軍主導だといいます。かつて日本の東北地方で目撃された正体不明の飛行物体をはじめ、台湾、グアム、ハワイ、フロリダ辺りに現れた気球もこの偵察気球である可能性は高い。ただ、記事によると、今回の件は軍が自国の外務省にも連絡しておらず、最高指導部が『部門間の意思疎通の改善を指示した』とあることから、指導部内の混乱ぶりも想像できます」(同)

 発足当初から中国を「戦略的な競争相手」と位置付ける一方、その裏では中国を最大の脅威として厳しい締め付けを続けてきたバイデン政権。2021年にはCIA内に対中スパイ工作に特化した専門チームを設立。さらに、国務省内にも「チャイナ・ハウス」という組織を立ち上げ、対中政策に力を注いできた。つまり、そんな中で起こったのが、今回のスパイ気球問題だったわけである。

(灯倫太郎)

ライフ