戦後54件目の諜報事件に認定!北朝鮮スパイ「李虎男」は大物工作員だった

 戦後54件目の北朝鮮スパイによる「諜報事件」が明らかになった。

 中国を拠点に活動する北朝鮮工作員が外貨獲得のため、日本企業を利用した疑いがあるとして、警察当局が「諜報事件」に認定していた、と4日の読売新聞オンラインが伝えた。報道によれば、この工作員は「リ・ホナム(李虎男)」と名乗る60歳代の男で、北朝鮮の対外工作機関・偵察総局に所属する“大物”で、20年以上前から対南(韓国)工作に関わってきたとされている。

「リ・ホナムの名前が初めて表舞台に登場したのは、2010年。韓国情報機関の元職員がこの男に軍事機密を渡したとして韓国当局が国家保安法違反で起訴したことがきっかけです。男は当時、貿易会社代表などの実業家を装い、北京や瀋陽などを拠点に活動していたのですが、多数の偽名と肩書を偽装。13年にも軍事装備品に関する事件が摘発され、さらに19年末にロシアでの韓国ガス公社幹部との接触が韓国メディアで報じられるなど、韓国ではちょっとした有名人でした」(韓国在住のジャーナリスト)

 そんなこともあり、2010年に起訴された韓国情報機関の元職員の手記をベースにした韓国映画『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』では、「北朝鮮高官」として登場。今回、その男が日本でスパイ活動を行っていたことが当局によって正式に認定されたわけだ。

「警視庁公安部に韓国情報部から情報が寄せられ、捜査が始まったのは2017年ころとされますが、捜査本部は男が関わる貿易会社などが、リビアの重油やロシアの液化天然ガスを買い付けて転売していた関係書類などを複数押収。その総責任者が北朝鮮工作員リ・ホナムであることを掴んだようです。ただ、日本には、韓国の国家保安法のような工作活動を直接取り締まる法令はない。そのため入管難民法違反などで摘発しても、押収物を分析する程度のことしかできない。しかも、リ・ホナムが北朝鮮国籍で海外に滞在している状態とあって、日本当局の捜査の手も届きにくい。つまり、北朝鮮のスパイにとって日本は諜報活動を行う上で、安全この上ない国だというわけです」(同)

 報道を受け、SNS上では《日本はスパイ天国と言われるけど、いまだに諸外国が持っているスパイ防止法を作らないのか全く理解出来ません!》《こんな話は氷山の一角に過ぎない。民主主義国には国民を守るためにスパイ防止法が存在するが日本には存在しない、狙ってくださいと言っているようなものだ》《日本のお粗末な対北朝鮮警戒網が原因だろ、まだまだ表に出ていないスパイ事件がたくさんあるんだろう》などの声があふれた。

 野党からの反対で廃案となった「スパイ防止法」だが、今回の事件が再び法案提出の契機となるだろうか。

(灯倫太郎)

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