なぜ参政と国民民主は支持を伸ばせたのか?参院選2025の全分析

 参議院選挙で自民党は歴史的な大敗を喫し、国民民主党と参政党が議席を大幅に増やした。この結果は、日本の政治地図を大きく変えるものであり、背景には複数の要因が絡み合っている。

 自民党の大敗は、まず石破茂首相の政権運営に対する国民の不信感が大きい。物価高対策として打ち出した現金給付策は、場当たり的と受け止められ、長期的な経済不安を払拭できなかった。特に、消費税減税を掲げなかったことが、物価高に直面する有権者の期待と乖離し、支持離れを加速させた。また、派閥の政治資金問題が再燃し、党内の透明性や信頼性の欠如が批判を浴びた。さらに、若年層を中心に既成政党への不満が高まり、SNSを通じた情報拡散が自民党への逆風を強めた。選挙戦では、石破首相の演説が危機感を十分に伝えきれず、支持層の結集に失敗した。1人区での敗北が目立ち、地方での組織力低下も顕著だった。

 国民民主党は、改選4議席から17議席へと飛躍的な伸びを見せた。その背景には、現実的かつ具体的な政策が支持を集めた点がある。物価高対策として条件付きの消費税5%への引き下げを掲げ、経済的な不安に直面する中間層のニーズを捉えた。また、玉木雄一郎代表のSNS戦略が功を奏し、YouTubeやXでの積極的な発信を通じて、特に男性や若年層の支持を獲得。既成政党への失望感を背景に、「現実的な改革」を求める有権者の受け皿となった。

 候補者の公認プロセスでの一貫性も、党の信頼感を高めた要因だ。さらに、地方での組織強化と選挙区での戦略的な候補擁立が、議席増に直結した。

 参政党は、改選1議席から14議席へと驚異的な躍進を遂げた。この背景には、SNSを活用した神谷宗幣代表のインフルエンサー的な発信力がある。「日本人ファースト」を掲げ、外国人政策や伝統的価値観を強調する主張が、保守層や若年層の一部に強い共感を呼んだ。自民党や立憲民主党に失望した有権者が、新しい選択肢として参政党に流れた。特に、物価高やオーバーツーリズムへの不満が、外国人政策への関心を高め、参政党の主張が刺さった形だ。

 さらに、参政党は既成政党と異なり、若者向けのダイナミックなキャンペーンを展開。SNSでの拡散力と、支持者の熱量を高める戦略が議席増に繋がった。ただし、過激な言動への懸念も一部で浮上しており、今後の課題となる。

 今回の選挙では、投票率が前回比で6.46ポイント上昇し、特に若年層の投票行動が活発化した。SNSの影響力が拡大し、既成政党の伝統的な選挙戦術が通用しにくくなった。物価高対策が最大の争点となり、消費税減税や廃止を掲げた野党が有利に働いた。自民党の支持基盤の弱体化と、国民民主党・参政党のポピュリスト的訴求力が、議席の再配分を促した形だ。

 自民党は、衆参両院での少数与党化により、政権運営が一段と難しくなる。石破首相の続投意向は党内分裂を抑える狙いだが、人材不足と支持率低迷が課題だ。一方、国民民主党と参政党は、法案提出可能な議席数を確保し、国会での影響力を増す。両党の是々非々の姿勢が、連立政権や政策ごとの協力にどう影響するかが注目される。日本の政治は、多党制への移行とポピュリズムの台頭により、新たな混迷の時代に突入する可能性が高い。

(北島豊)

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