国民民主党の玉木雄一郎代表は4月30日、都内日本橋で開催された日本保育連盟の勉強会で講演し、自らが首相に就任した暁には「教育国債」を発行し、子育て分野の予算を倍増させたいとの考えを明らかにした。これを受け、永田町からは「弱小野党の党首に過ぎないのに天下を取ったような鼻息。何様のつもりか」という声しきりだ。
政治アナリストが言う。
「近い将来総理になったらという玉木氏のタラレバ発言が目立ち始めたのは、参院選で与党が大負けする可能性があるからだ」
自民党は昨年の衆院選で「旧安倍派の裏金問題」で大敗、公明と合わせても過半数に届かなかった。そのため石破政権は一部野党の意見を取り入れながら薄氷を踏む、その場しのぎ政権となっている。しかも裏金問題は都議会自民党でも発覚し、その後遺症で参院選も自民には厳しい逆風が吹きそうだ。それに加えて、米国との関税交渉で農業などの分野に大きな譲歩を強いられそうなのもマイナスだ。
一方で野党第一党の立憲民主も、自民の失策追及ばかりが目立ち、有権者はうんざりしている。維新は誘致に尽力した看板メニューの万博が不人気で、あおりを受ける。そんな中、「手取りを増やす」とアピールした国民民主は昨年の総選挙で7議席から4倍の28議席確保して以来、その勢いをキープしている。先のアナリストが言う。
「読売新聞の最新政党支持率でも自民は28%でトップだが、野党第一党の立民の6%を大きく引き離し、国民は13%で第2位だ。参院選の比例投票先でも、国民は自民に次ぐ第2位で15%と高い支持率となっている。この分だと、国民が参院選で目標とする16議席超え(改選議席4)の実現性はかなり高い。そして自公が参院選でも過半数割れなら石破退陣は必至だ。そこで急浮上しているのが、原発政策などで考えが近い国民民主が細部の政策で折り合えば、連立参加して玉木氏が首班指名されるというシナリオだ。すでに公明は、そのシナリオを織り込みずみという情報も流れている」
そうした背景を受けてか、最近の玉木氏はメディアの取材でも参院選後の政権入りの可能性を匂わせていた。そして冒頭に記した「首相就任時の教育費発言」だ。
玉木氏はその講演会で、仮に首相になったら「教育国債を発行し保育、子育て、教育、人づくりの分野の予算を来年度から倍増させたい」と強調したのだ。
しかし、国民の受け止めはさまざまだ。SNSでは次のような厳しい投稿もなされている。
「すでに自公国連立政権の総裁選活動を行っているようですが、国民民主党は何を実行したのでしょうか。人への投資を民主党の愚行と立民に非難もしていましたね。口ばかりでうんざりです」
「玉木党首は財源も政策の整合性など気にせずなりふり構わず、いろんな政策を打ち出している。玉木氏に翻弄されていないか有権者は要検討だ」
自民党関係者も、こう指摘する。
「参院選で国民が大勝し自民が大敗しても玉木氏が首相になれるかどうかは分からない、一寸先は闇が政界だ。それなのに、ステップのはるか前段階で、首相になったときの教育費の話を講演会でするとは驚き。トランプ大統領のはったりも顔負けだ。こういうのはたいてい捕らぬ狸のナントカで終わる。失速しないよう祈るばかりだ」
政界再編のキーマンとして、玉木氏の一挙手一投足が注目を浴びている。
(田村建光)