6月22日、トランプ米大統領はイラン中部のフォルドゥ、ナタンズ、イスファハンにある3つの核施設に対し、米軍による大規模な空爆を実施したと発表した。この攻撃は、イランの核開発能力を破壊し、核の脅威を阻止することを目的としたもので、トランプ氏は軍事的に見事な成功と誇った。しかし、この軍事行動は、トランプ政権が掲げるアメリカ・ファーストの原則と矛盾するのではないかという議論が浮上している。
「アメリカ・ファースト」は、トランプ政権の外交政策の核心であり、米国の国益を最優先し、海外での軍事介入や他国の紛争への関与を最小限に抑えることを目指す。この理念は、トランプ氏の1期目において、アフガニスタンやシリアからの米軍撤退、イラン核合意(JCPOA)からの離脱、経済制裁を通じた政策に反映されていた。特にイランに対しては、核合意を不十分として離脱し、経済制裁でイランを交渉のテーブルに引き戻す戦略を採用した。このアプローチは、米国の資源を中東の終わりのない戦争に浪費せず、国内の経済や安全保障に集中するというアメリカ・ファーストの精神と合致していた。
しかし、今回のイラン核施設への直接攻撃は、この原則から逸脱しているように見える。まず第一に、攻撃は中東での新たな軍事紛争を引き起こすリスクを高める。米軍基地への攻撃激化や同盟国への攻撃が現実化すれば、米国はさらなる軍事関与を余儀なくされる。これは、トランプ支持層の「他国の戦争に首を突っ込まない」という期待に反する。
第二に、攻撃の経済的影響だ。アメリカ・ファーストは、米国民の経済的繁栄を重視するが、イランへの攻撃は石油価格の不安定を招く。実際、トランプ氏はイスラエルの攻撃に当初反対した理由の一つとして、石油価格への影響を挙げていた。エネルギーコストの上昇は、米国内のインフレ圧力を強め、トランプ政権の経済政策に悪影響を及ぼす。
一方で、トランプ政権は攻撃をアメリカ・ファーストに合致するものと正当化するだろう。イランの核兵器が米国や同盟国にとって差し迫った脅威であると主張し、攻撃はその脅威を除去する決断だったと強調する。また、軍事行動を迅速かつ限定的に実行することで、長期的な紛争を回避し、米国の強さを世界に示したと主張するかもしれない。しかし、攻撃の成功を誇る一方で、イランの報復や国際社会の反発が現実化すれば、米国は中東でのさらなる関与を避けられなくなる。
(北島豊)