都議選を左右した「新・無党派層」が参院選でもカギを握る

 6月22日に投開票された東京都議会議員選挙で、都議会第一党であった自民党が大きく議席を減らし、小池百合子都知事が創設した「都民ファーストの会」(以下、都ファ)が第一党に返り咲いた。しかし今回の選挙で最も注目されたのは、従来の「無党派層」とは異なる新たな勢力、「新・無党派層」の存在だった。

 ある選挙アナリストはこう分析する。

「近年の選挙では、支持政党を持たない『無党派層』の動向が選挙の行方を左右してきましたが、昨年の都知事選や兵庫県知事選あたりからは、SNSを積極的に活用するネット世代の有権者、つまり『新・無党派層』の影響が顕著になっています。特に、昨年の都知事選で約166万票を獲得し、落下傘候補ながら次点となった石丸伸二氏は、この層の象徴的存在でした。今回、彼が都知事選の勢いを背景に立ち上げた新党『再生の道』の得票動向も、注目を集めていました」

 選挙結果としては、都ファが選挙前より6議席増の32議席(追加公認含む)を獲得し大きく躍進。国民民主党(玉木雄一郎代表)はゼロから9議席へと急伸し、さらに参政党も初の3議席を獲得するなど、新興勢力の勢いが際立った。

 前出のアナリストは、各党の伸長理由を次のように分析する。

「都ファの躍進は、小池知事が水道料金の減免など、都民向けの具体的な優遇政策を次々と打ち出した“バラマキ効果”によるもの。国民民主党は、昨年の衆院選で議席を4倍に伸ばした勢いが持続しており、玉木代表のYouTube戦略や『手取りを増やす』という分かりやすいメッセージが有権者に響きました。参政党は『日本ファースト』を掲げ、都民税半額など大胆な政策でネット世代を取り込みました」

 一方、ネット選挙の象徴とされる石丸氏率いる「再生の道」は、予想に反して厳しい結果となった。その理由について、同アナリストはこう指摘する。

「石丸氏の動画は再生数こそ圧倒的でしたが、公約が不明確だったため、前回の都知事選で支持した『新・無党派層』が今回は離れた可能性があります。構想自体は先進的でしたが、時期尚早だったかもしれません」

 また、今回の都議選結果が今後の参院選に与える影響について、テレビ局の政治デスクは次のように語る。

「国民民主党は、参院候補として名前が取り沙汰された山尾志桜里氏を巡る混乱、いわゆる“山尾ショック”に見舞われ、支持率が低下しました。都議選への影響は最小限にとどまりましたが、本番となる参院選では大きな波紋を広げる恐れがあります。『新・無党派層』は、不倫などのスキャンダルに敏感で、クリーンさを重視する傾向が強い。国民民主党がこれを軽視すれば、足元をすくわれるかもしれません」

 自民党については、厳しい審判が下された一方で、最低限の踏みとどまりを見せたと見る向きもある。

「裏金問題で批判に晒されながらも、自民党は意外に健闘しました。小泉進次郎氏が訴えた『備蓄米配布』などの具体的な行動は、参院選では一定の効果を発揮する可能性があります。『新・無党派層』は、小泉氏のように、わかりやすく行動で示すタイプの政治家に共感しやすいのです」

 いずれにしても、今後の参院選でもカギを握るのは、この「新・無党派層」の動向であることは間違いない。

(田村建光)

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