プーチン氏がトランプ氏との会談でイランVSイスラエルの仲介役を買って出た「ドス黒い思惑」

 イスラエルとイランによる攻撃の応酬が激化の一途を辿っている。

 今回の軍事衝突により、イスラエルでは少なくとも14人が死亡、380人が負傷したと伝えられ、一方のイラン側も少なくとも224人が死亡しているという。

 イスラエル側から6月13日に攻撃を仕掛けた背景には、イランの核開発加速があるとされる。

「12日、国際原子力機関(IAEA)理事会が、約20年ぶりにイランのIAEA憲章への違反を正式認定し査察を申し入れたのですが、核開発拡大を宣言するイランはこれを拒否。これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は13日未明のビデオ声明で、イランの核開発を『イスラエルの存続そのものに対する明白で差し迫った脅威だ』として、自衛を大義名分にして『ライジング・ライオン作戦』と名付けた攻撃を開始したというわけです」(国際部記者)

 これに対し、イラン側も14日、報復としてイスラエル側の燃料製造施設やエネルギー関連施設を標的とした攻撃を開始。戦闘は日を追うごとに激化している。

「アメリカとイランとの核交渉が長期にわたって停滞する中、イランは核兵器転用に可能な高濃縮ウランの備蓄を続け、近年ではその水準が核兵器開発に可能な水域に達したとの報告も寄せられていた。そんな流れの中で、2023年にはイスラエルとハマスによる衝突が勃発し、イランとイスラエルの代理戦争が激化。ただ、国際社会からの批判もあり、イスラエルもうかつに手が出せない状況にあったんです。つまり、今回のイランによるIAEA査察拒否はイスラエルに『自衛』手段としての攻撃を正当化させるため、渡りに船だったことになります」(同)

 とはいえ、このまま両国による戦闘が激化した場合、ヒズボラやフーシ派をはじめ、シリアやイラクなどの反イスラエル武装勢力が参戦する可能性は高く、そうなれば全面的な中東戦争が勃発する可能性も否定できない。

 そんな懸念が広がる中、14日、ロシアのプーチン大統領がトランプ米大統領との電話会談のなかで、両国の戦争終結のため仲介役を買って出る用意があると表明した。

「クレムリンによれば、プーチン氏は前日にもイスラエルのネタニヤフ首相に対し、同様の提案を行っていたそうなのですが、ロシアはイスラエルとも、反米を掲げるイランとも関係が深いことは周知の事実。一見、プーチン氏には何のメリットもなく、仲介を引き受けるはずはないことから、言動の真意を巡り様々な憶測が広がっています」(同)

 ただ、実はロシアがウクライナ戦争で使用している攻撃ドローンはほぼイラン製。したがってイラン・イスラエルの衝突が激化すれば、ドローン調達に弊害が出ることは必至だ。

「しかも、これまでロシアは中東戦略の基軸をイラン、シリア両国との友好関係においてきましたが、いざこざが大きくなった場合、昨年12月に起きたシリアのアサド政権崩壊と同じ轍を踏む可能性も出てくる。プーチン氏が表明した違和感アリアリの『平和的仲介』の裏には、そんなドス黒い思惑が見え隠れします」(同)

 毎度おなじみとなったプーチン氏の二枚舌外交と、今後のイランVSイスラエル戦争の行方は…。

(灯倫太郎)

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