トランプ政権、自動車関税を25%に引き上げへ?日本経済への影響と米国の思惑

「(エイプリルフールの)4月1日にやるつもりだったが、私は少し迷信深いんだ。4月2日に話すことになるが、自動車への関税は25%程度になるだろう」

 2月18日の記者会見で、アメリカが輸入する自動車への関税について、現在の2.5%から10倍の25%に上げる見通しを示したトランプ大統領。関税の対象国は明かしていないものの、日本も含まれる可能性があるため、来月上旬にも武藤容治経済産業大臣が訪米する方向で調整に入っていると伝えられる。

 日本自動車工業会によれば、一昨年度の日本からアメリカへの輸出は148万台で、6兆261億円。これは日本からアメリカへの輸出の28.3%と第1位を占め、自動車部品も1兆2312億円で輸出全体の2位にあたるという。

「現在の2.5%関税なら、たとえば日本から500万円の車をアメリカに輸出すると単純計算で512万。ところが25%になれば100万円以上上乗せされた625万円で売られることになります。現時点、アメリカに輸出をしている自動車メーカーは6社ほどで、試算によれば、25%の関税が課された場合、1.4兆円を超える追加関税コストがかかることになる。当然、大手企業のもとには下請け、孫請けの中小企業があるため、大規模な倒産など、大きなリスクがのしかかることは間違いありません」(経済部記者)

 さらに、カナダやメキシコにも日本企業の生産ラインがあるため、それを含めた打撃は3.2兆円にも上るとされ、これは日本の自動車メーカー全体の営業利益を約3割も引き下げる可能性を示唆しているとされている。

「ただ、トランプ氏は会見で『アメリカで製品を作れば、関税を支払う必要はありません』と語っているように、狙いはあくまでも高い関税で脅しをかけ、生産拠点をアメリカへと移転させること。それによりアメリカが抱える巨額の貿易赤字の削減と、雇用を創出したい。なので、交渉を通じ各自動車メーカーがアメリカでの生産を増やすなど、先行きの計画を提出、努力をしてくれるのであれば当面は関税引き上げは発動しない、という展開もあり得るでしょう。ただ、日本の場合、自動車関連の中小企業が数多く存在しますから、それらをすべて切り捨て米国にある中小に移行することは物理的に不可能。政府がそこをどう交渉するか争点になると思われます」(同)

 というのも、トランプ氏が本気で関税引き上げを行った場合、アメリカ国民が他の国からの物を“割高”に買うことになるため、結果、国内がインフレになることは間違いない。そのためトランプ氏は、「関税を除外してあげる代わりに、アメリカから何を買ってくれるの?」というディールを展開していくことになるだろう、というのが多くの専門家の見方だ。さらに…。

「今回の自動車の関税引き上げに苦慮しているのが、アメリカの自動車ビッグスリーとして知られるゼネラル・モーターズ、クライスラー、フォード社です。3社はアメリカで販売する自動車の多くをメキシコなどで生産しているため、ゼネラル・モーターズの最高財務責任者、ポール・ジェイコブソン氏などは、インタビューで『関税が恒久化すれば工場の配置や移転など、さまざまなことを検討しなくてはならなくなる』と不安を口にしています。つまり、自動車への関税が25%となれば、ビッグスリーが被る損害も巨額となるということ。当然そちらからの反発もでるでしょうから、トランプ氏がその辺りをどうさばいていくかにも注目が集まっています」(同)

 4月2日まであと1カ月ちょっと。最終的な着地地点の行方は…。

(灯倫太郎)

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