参院選の行方を大きく左右する“爆弾選挙区”として、鹿児島選挙区が注目を集めている。自民党候補が劣勢に立たされており、政権維持をかけた大一番となる可能性が高まっている。
鹿児島は、石破政権の中枢を担う森山裕・自民党幹事長の地元。ところが選挙戦前半から報道各社の情勢分析では、自民党公認候補・園田修光氏が、立憲民主党推薦の無所属候補・尾辻朋実氏に“半歩リードを許す”という想定外の展開に。永田町では早くも「自民敗北なら石破政権崩壊は避けられない」との声が広がっている。
自民関係者によれば、「園田氏は公募で選出されたが、その選考から漏れた尾辻朋実氏が無所属で出馬。しかも立民推薦、共産支援という構図に加え、父親が自民の大御所・尾辻秀久氏(前参院議長)。まったく面倒な事態になった」という背景がある。
政治アナリストはこう分析する。
「尾辻氏は長年にわたり鹿児島選挙区で圧倒的な影響力を持ち、強力な支持者ネットワークも存在する。娘の朋実氏が立民推薦で出馬すれば、自民支持層でも“尾辻”という名前だけで投票してしまう有権者も少なくない」
立民の鹿児島責任者である川内博史衆院議員が、“尾辻の娘”を口説いた仕掛け人だとされている。自民党ベテラン議員はこう語る。
「川内氏は早稲田雄弁会出身の弁舌巧みな戦略家。『娘を立民推薦で』と打診され、尾辻秀久氏が“娘かわいさ”に折れた可能性が高い」
これに対し、自民長老は苦言を呈する。
「前半の情勢から“ややリード”と出れば、実態は大差がついていると見てよい。園田氏を公認したのは、菅元首相と近い森山氏の意向が強く働いたから。石破政権が森山頼みであることが、最大の脆弱点だ」
仮に鹿児島選挙区で自民党候補が敗北すれば、石破政権にとっては政権基盤が根底から揺らぐ大事件。巻き返すには全党を挙げた対応が求められているが…。
(文・田村建光)