「盾突く者は粛清」プーチンの政敵・ナワリヌイ氏「中毒症状」後に「連絡途絶」が意味するもの

 来年3月17日に実施が決まったロシア大統領選に向け、8日、公式に出馬を宣言したプーチン大統領。ウクライナ侵攻が長期化する中、国民からの不満の声はあるものの、その人気はいまだ絶大だと伝えられる。とはいえ、反プーチン派もただ黙って指をくわえているわけではない。7日にはロシアの反政権運動指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏の陣営が、「プーチンのいないロシア」と題するキャンペーンをウェブ上でスタートさせた。

「これは、プーチンがこのまま大統領の座に居座り続ければロシアは崩壊してしまう。そうならないためにも、プーチン以外の候補者へ投票し、プーチン退任を望む大多数の意思を示そう、というものです。ナワリヌイ氏は反プーチン派の急先鋒と言われた政治家でしたが、2020年8月に毒劇物中毒で意識不明に陥り、彼の側近らが『毒殺を命じたのはプーチンだ』と名指しで批判。そんなことから、治療を受け回復したベルリンから帰国した翌年1月、空港で逮捕され、懲役19年の刑を受け現在も刑務所に収監中です。現在は、同氏が創設した汚職追及団体の側近らが同氏に代わって抗議行動を続けており、今回の大々的なキャンペーンもその一環ということになります」(全国紙国際部記者)

 ところがそんな中、ナワリヌイ氏の側近であるマリア・ペブチフ氏が8日、自身のX(旧ツイッター)を更新。同氏と3日間連絡が取れない状態だとして《担当弁護士は接見を拒否され、オンライン法廷審理にも出席しなかった。ナワリヌイ氏には心臓に関する深刻な問題が起こっており、命に危険な状況にある》と伝えている。

「ナワリヌイ氏の報道官役を務めるキラ・ヤルミシュ氏によれば、同氏はモスクワから250キロ東にあるメレホボの刑務所に収監されていたが、刑務所の職員は『彼はもうここの収監者ではない』として、どこに移送されたかは明かさなかったとのこと。ナワリヌイ氏は今年4月頃から再び正体不明の中毒症状を訴え、心臓関連にも深刻な問題が生じていたといわれますからね。連絡が取れなくなったのは、ちょうどウェブ上でキャンペーンがスタートした時期と重なるため、関係者の間に懸念と不安が広がっています」(同)

 なにせ、プーチン大統領を批判したがゆえに、自殺や毒殺・射殺と、人がある日突然“消えてしまう”ことが往々に起こりうるロシアのことだ。国内はもちろんのこと、国外にいても「裏切り者は絶対に許さない」とばかりに、政敵とされる者は例外なく粛清対象となってきた。

「プーチンによる粛清疑惑が表面化したのは、2006年にロシア連邦保安局(FSB)の元スパイ毒殺事件。続く07年には反政権派のジャーナリストが射殺され、13年にはプーチンを政治的に支援していたオルガルヒが決裂後、亡命先のロンドン郊外の自宅で首をつった状態で見つかっています。また15年にも対ウクライナ政策を批判したネムツォフ元第1副首相が射殺され、その後もプーチンに批判的な態度をとった人々が次々に不審な死を遂げている。その中には、プーチンと蜜月だったワグネル創始者のプリゴジン氏も含まれていますが、尻尾を振ってきているときはいいが、1度吠えようものなら息の根を止めてしまえ、というのがかの国の独裁者のやり方だということです」(同)

 はたしてナワリヌイ氏の運命は…。そして「プーチンのいないロシア」はいつ実現するのか。

(灯倫太郎)

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