円安によるインバウンド急増で、都市部のホテルでは予約すら困難な状況が続いている。価格もコロナ禍前の1.3倍に高騰。すっかり日本人旅行者による国内旅行需要が停滞する一方、無料で車中泊が可能な道の駅や、高速のSA/PAが相変わらずの人気だ。
ただ、ドライバーの中にはコインパーキングで宿泊したり、コンビニの駐車場を独占する者もいることから、かねてから「車中泊」を巡るトラブルが後を絶たなかった。
「2018年には大阪府茨木市内にあるコンビニの駐車場を、約1年半にわたり車庫代わりにしていた男性に対し、大阪地裁が約920万円の賠償金支払いを命じた事例があります。この男性は店側が再三注意したにもかかわらず、まったく応じなかったため、コンビニ側が1時間あたりの駐車代金と慰謝料の支払いを求め、ほぼ請求通りの判決が言い渡されたわけですが、近年の車中泊ブームの影響もあり全国で同様のトラブルが急増しているようです」(社会部記者)
というのもコンビニの駐車場は公道ではなく、あくまで私有地のため、道路交通法では罰することができないことから、警察に連絡しても取り締まることが難しい。そのため、「無断駐車が発覚した場合罰金○万円」といった看板や貼り紙を掲示するコンビニもあるが、実はこれにも法的効力はなく、掲示された罰金を払う義務は生じないとされている。
「さらに店側がレッカー移動したり、タイヤロックなどで車を固定する行為も原則禁止。民事裁判を起こしても時間とカネがかかるだけなので、ほとんどのコンビニが私有地への無断駐車を黙認せざるを得ない状況にあるんです」(同)
そんな中、コンビニ最大手のローソンが千葉県6店舗の駐車場を車中泊施設としてサービスすると日本経済新聞が報じたのは6月6日のこと。記事によれば、価格は1泊2500~3000円で、サービス利用のためにはオンライン予約と事前決済が必要。チェックインは午後6時以降、チェックアウトは翌日午前9時まで。宿泊客は店内のトイレを自由に利用でき、ゴミ袋なども提供されるという。
「ローソンが日本全国で展開する店舗は、おおよそ1万4000店舗。うち車中泊対応可能な広さの駐車場がある店舗は3000ヵ所以上あるとされています。地方都市でもオーバーツーリズムで宿泊インフラ不足が問題視されていますからね。7月14日に開始されるというこのサービスは当面“駐車場で寝るだけ”という形になるでしょうが、今後、道の駅や高速のSA/PAのように、シャワー施設の提携、Wi-Fi提供などサービスの拡充していけば、地方の宿泊インフラ不足を補う可能性は大きい。さらに、車中泊サービスが観光地や温浴施設と連携できれば、宿泊費高騰の救世主になる可能性もあり、地方の自治体も期待を寄せているようです」(同)
はたしてコンビニ駐車場「車中泊サービス」は今後、広がりを見せていくのか。
(灯倫太郎)