千葉ロッテ・佐々木朗希がマイナビオールスターゲーム第1戦(7月19日)に先発し、1回被安打1、奪三振2とペナントレースさながらのピッチングを披露した。
「ファン投票で1位選出された際、会見を開いていますが、そこでも『しっかり抑えにいく』と話していました。でもまさか、本当に全力投球してくるとは思いませんでした」(スポーツ紙記者)
佐々木を本気にさせた理由はいくつかある。まず、初出場を果たした昨年は、1回1失点だった。しかも、トータルで投じた23球のうち、変化球は2球だけ。実は右手中指のマメを潰してチームを離脱していて、球宴が復帰マウンドでもあった。昨季の屈辱が闘争心に火を点けたという。
しかし、実戦モードで投げるとなれば、リスクも伴う。この日、マスクをかぶっていたパ・リーグ捕手はオリックスの若月健矢。
オリックスはペナントレースを争うライバルだ。ライバルチームの捕手に手の内を見せてしまえば、終盤戦の対戦に影響してくるのではないだろうか。
「球宴でペナントを争うピッチャーのデータを取るようなことはもうしません。そんなのはひと昔前の話」と失笑する声が聞かれたが、こんな指摘もある。
「今は対戦チームの選手ともまるでチームメイトのような接し方をします。投手同士で変化球の握り方を教え合うし、自主トレでも当たり前のように他球団の選手と行動します。侍ジャパンの影響でしょう」(前出・同)
佐々木は今回、フォークボールとスライダーを決め球にしていた。ひと昔前の考え方で言えば、直球と変化球での微妙な投球モーションの違いをライバルチームの捕手に見せたことになる。
一方で「若い選手がオールスターに出て他球団の先輩選手から助言を受けて、飛躍的に成長する」ケースは昔からよくあること。
「ただそれは、若手の実力を認めたうえで教えていたのであって、今の時代はその『認めてもらうまで』の前段が省略されているんです」(ベテラン記者)
佐々木は令和の怪物と言われている。本気で投げた今年の球宴シーンは、駆け引きナシの令和球界を象徴しているのかもしれない。
(飯山満/スポーツライター)