他の西側諸国と同様に、ロシアに経済制裁を行っている日本。その1つが輸出入の停止で、これにより供給がストップしてしまったのが木材だ。
国連食糧農業機関(FAO)によると、20年時点の日本の国土に占める山林の割合は68.41%で世界21位。ロシア(49.78%)よりも多いが、面積で比較すると30分の1程度しかない。
さらに日本の木材自給率を見ると、1955年の時点では96.1%とほぼ国産だったが、安い輸入木材が入ってきたことで林業が衰退。特にロシアは北米やEUと並ぶ主要輸入先で、20年の輸入針葉樹製材の約17%がロシア産だ。
「ロシア産は伐採や製材の人件費が安く、極東からの輸出なので仕入れコストが抑えられるんです。それだけに住宅業界からは重宝されており、輸入禁止は大打撃でした」(農業専門誌記者)
木材不足は深刻で、一連の「ウッドショック」はメディアでもたびたび報じられたが、これにより需要が急増したのが国産木材だ。今や植林された人工林だけでは足りず、自然林の伐採量も伸びているという。ちなみに林野庁が発表した21年の自給率は41.8%で、48年ぶりに40%台に回復している。昨年の統計はまだ公表されていないが、これを大きく上回ると見られている。
「一部の森林公社や森林組合では、山林の所有者に対し、木材の提供や土地売却の検討を呼びかけています。ウッドショック以前から木質バイオマス発電所は全国的に増えており、木材チップの需要が高まっていましたが、製材としての価値があればさらに高値での取引が可能ですからね」(前出・農業専門誌記者)
内需が拡大し、放置山林が活用されることは朗報だが、その背景にウクライナ戦争があるとすれば、関係者の思いは複雑かもしれない。