北大西洋条約機構(NATO)への加盟国入りを熱望しながらも一向に認められないウクライナ。ゼレンスキー大統領は1月17日、英国のスターマー首相との共同会見で、米国とドイツ、そしてNATO加盟国でも大統領が親露派のハンガリー、スロバキアの4カ国が反対していると名指して批判している。
仮にウクライナの加盟を認めた場合、これまでのような間接的な支援にとどめるわけにはいかず、NATO軍を派兵する必要が出てくる。もしそうなれば戦火が拡大し、欧州全土が巻き込まれる可能性もある。それだけに表立って反対ではなくても慎重な立場を取っている国が多いとも報じられている。
このNATOに対し、旧ソ連圏の6カ国で構成される集団安全保障条約(CSTO)という組織がある。冷戦時代のワルシャワ条約機構ほどの規模ではないが、それに代わるロシアを中心とした軍事同盟だ。しかし、そのロシアはNATOの一員でもある。
2002年、当時の加盟19カ国に加える形で「NATO・ロシア理事会」を設立。ロシアは対等なパートナーとなり、事実上の準加盟国に。ローマで行われた調印式にはプーチン大統領も参加している。
「ロシアは1997年からNATOとの合同常設評議会に参加していましたが、これをさらに密接な関係にしたのが同理事会です。プーチン大統領が望んで実現に至りましたが、本当は加盟国入りを狙っていたとも言われています」(軍事ジャーナリスト)
当時は冷戦時代のような状況ではなかったが、欧州圏の安全保障の確立にロシアの協力は不可欠。ただし、東欧・中欧に配置するミサイル防衛システムをめぐって対立するなど、良好な関係だったとはいえなかった。
「ロシアがいることでまとまる話もまとまらず、正式に加盟国となっていたらNATOは機能不全に陥っていたでしょうね。とはいえ、現在のウクライナより加盟国入りに近い立場だったのは明らかです」(同)
ロシアがNATO加盟国としてだったら今以上にややこしいカオスな状況になっていたかもしれない。