ウクライナ侵攻から3年 ロシア撤退・継続を巡る日本企業の現状

 ロシアによるウクライナ侵攻から2月でちょうど3年。ロシア軍が東部ドンバス地方やクリミア半島を占拠する状況は依然として続き、それはウクライナ全土の5分の1あまりに達する。今日、トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領との直接会談に意欲を示しているが、ロシア軍が実効支配する現状での停戦が視野にあり、ウクライナにとっては政治的に厳しい状況と言えよう。

 一方、ウクライナ侵攻によって欧米や日本などはロシアへの経済制裁を強化し、多くの外国企業がロシアから撤退していった。米国の石油大手エクソンモービルも侵攻直後の22年3月、ロシア極東サハリンにおける石油や天然ガスの開発事業サハリン1の操業停止とロシアへの新規投資停止を発表し、同年10月には完全撤退した。スウェーデンのアパレル大手H&Mも、同年11月に完全撤退。マクドナルドにいたっても同年、ロシア国内で展開する800あまりの店舗を一斉閉鎖し完全撤退を発表したが、その後現地の実業家が全店舗を買い取り、ロシア語で「美味しい、それだけ」を意味するフクースナ・イ・トーチカという名のファーストフードチェーンが展開され始めた。

 また、日本企業の間でも撤退の動きが広がり、トヨタ自動車が22年9月、第2の都市サンクトペテルブルクにある工場を閉鎖し、ロシアからの完全撤退を明らかにした。それに続くように、日産やマツダ、いすゞ自動車など大手自動車メーカーが相次いでロシアからの撤退していった。

 しかし、昨年より2月に帝国データバンクが公表した統計によると、侵攻時にロシアに進出する日本の上場企業168社のうち、ロシアからの撤退や事業停止など脱ロシアの動きを示した企業は80社に留まり、依然として半数近くの日本企業はロシアにおけるビジネスを継続しているのだ。この1年、戦況を巡る情勢は双方とも決定的な一打を打ち出せずにいることから、昨年から撤退した日本企業は少ないと考えられる。

 ロシアでビジネスを継続していると企業イメージが損なわれるというリスクもあるが、企業の中には利益に占めるロシアシェアが大きい企業も少なくない。例えば、エネルギー業界や水産業界にいたっては、ロシアに代わる資源国を発見するのが難しいという事情もある。国家による侵略という国際秩序に対する暴挙が生じても、現地でビジネスを継続しなければならないという切実な状況があるのだ。

(北島豊)

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