ウクライナのゼレンスキー大統領が対ロシア戦線で果敢に戦ってきたウクライナ軍の英雄、ザルジニー総司令官を2月上旬更迭したことでウクライナ国内、欧米諸国に衝撃を与えている。この解任劇の背景には、11月の米大統領選「もしトラ現象」が深くからんでいるという。つまり「もしトランプが勝利したら」と先を見据える現象だ。しかしバイデン政権下では、今、この「もしトラ」を逆転する「トラチン」作戦が密かに進んでいるという。ウクライナとアメリカで一体何が起きようとしているのか。
アメリカの深層に詳しい日本の公安関係者はザルジニー司令官解任騒動をこう分析する。
「以前からゼレンスキーとザルジニー軍司令との確執は囁かれていたというが、そんなことはない。根っこにあるのは『もしトラ』、つまり『もしもトランプが大統領になったら』に怯える共和党内のゴタゴタが遠因でザルジニー氏の更迭につながった」
どういうことか。公安関係者に言わせると、今アメリカではウクライナ支援のための追加予算、日本円にして約9兆円が米下院で多数派を占める共和党の反対で可決できないでいる。このまま承認されなければウクライナ軍は深刻な弾薬不足などで敗退という最悪の危機を迎えかねない。米共和党下院がウクライナ援助資金を承認しないのは、世論調査でバイデン氏をやや上回り次期米大統領選で勝つ可能性が高まっているトランプ前大統領の圧力からだという。
「トランプはウクライナ支援を重んじるバイデンとは真逆で、ウクライナ支援打ち切り派。そしてバイデンを妨害するため下院で優位の共和党にウクライナ支援の予算案に反対するよう圧力をかけている。ゼレンスキー大統領にすれば背後からトランプにミサイルをぶち込まれているようなもの。ザルジニー司令官の更迭は疲弊したウクライナ軍のリセットと米国、特に共和党への抗議の意をこめてのゼレンスキーとザルジニー氏の“合同作戦”だ」(英シンクタンク関係者)
では、このままバイデン氏とゼレンスキー氏は敗北への道を歩むのか。前出の公安関係者はこう明かす。
「バイデンがトランプに優位を保たれているのはバイデンの高齢に対し有権者が懸念しているからだ。だがバイデンを支えるプロジェクトチームは今、とんでもないことを仕掛けようとしている。バイデン氏に非常事態があった場合、大統領権限を持つのは副大統領。その副大統領は前回同様、ハリス女史でほぼ決まりだがハリス女史の評判は芳しくない。そのため副大統領指名をハリスから変えようと水面下でバイデン特別チームが動きだしている」
公安関係者が言うのには、チェンジ候補はオバマ元大統領夫人かヒラリー・クリントンだというから驚きだ。
「一度ハリスで動き出したものを変えるとなれば大混乱は必至。しかし、このままではトランプが有利。それをひっくり返すには脱法に近い非常手段でないと勝てない。ハリスを説得しオバマ夫人かヒラリー氏になれば大統領選も一気にバイデンに流れがくる。そうなれば共和党内にいる反トラ勢力も動き下院のウクライナ支援予算も動きだす」(前出・公安関係者)
これが「もしトラ」に対抗する「トランプ沈没(トラチン)作戦」だという。事はそうすんなり上手くいくだろうか。
(田村建光)