ロシア軍「虐殺」の裏に「殺戮マシーン」養成システム【前編】カメラが捉えた戦争犯罪の数々

 戦闘開始から約50日が経過してもなお、一向に「落としどころ」が見つからないウクライナ侵攻。ここにきて、激戦区の東部はおろか首都キーウでもロシア軍の残虐行為の数々が暴かれ、プーチン大統領(69)の国際的な権威は失墜するばかり。なぜロシア軍はいまだ「せん滅戦」を繰り広げるのか─。

 キーウ郊外の都市・ブチャ。ロシア軍部隊は集合させた地元民の目の前で、男性1人を公開射殺。ロシア兵士は「我々は汚れを清めるためにやってきた」と大声で宣言した。他にも妻と娘の目の前で「タバコを持っていなかった」とのこじつけで撃ち殺された市民もいた。兵士だけではなく、無抵抗な老人や子供も次々に命を奪われている。

 ある女性は銃で脅され、まだ若いロシア兵に何度も性的暴行を加えられた。乱暴した末、証拠隠滅のために焼き払おうとしたものの、面倒だったのか焼却途中の無着衣の女性の遺体が数人並んで放置されていたこともあった。

 財産まで根こそぎ奪われた市民も少なくない。多くのロシア兵は同盟国である隣国のベラルーシから、本国の家族のもとに強奪した宝石や家電製品を送った。いずれも「戦争犯罪」と断罪される類の蛮行だ。

 日本ではあまりにも残虐な映像のため放送されていないが、世界のニュース映像では、殺害された遺体が無残に放置されている映像を連日、無修整で放送。ロシア軍に対する世界的な非難は強まるばかりなのだ。

 世界最大の国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」のアニエス・カラマール事務局長は、

「ロシア軍が非武装市民に、処刑その他の不法な殺人を行った証拠を集めている」

 と、一段と語気を強めているほど。平穏な日本で暮らす我々にとっては、前時代的で残虐な軍隊が現代社会に存在する事実は、もはや理解の範疇を越えていると言えよう。

「プーチンと習近平 独裁者のサイバー戦争」(文藝春秋・4月20日発売)の著者で国際ジャーナリストの山田敏弘氏が、次のように解説する。

「プーチン大統領の出身組織である情報機関・KGB(ソ連国家保安委員会)は、それが子供であれ女性であれ、敵や裏切者を排除する際には拷問や殺害が当たり前の組織。しかも現在のロシアの中枢、すなわちプーチンの側近は、KGB出身者で固められており、『邪魔者は殺す』という価値観はもはや国家としての体質と言っていいでしょう」(以下、コメントはすべて山田氏)

 驚くべきは、軍の規律や国際法的感覚すらも、古くは満州を占拠した当時のまま、全くアップデートされていないことだという。

「亡骸の傍らに自転車があれば、民間人であることは一目瞭然。それを埋めることも隠すこともしていない。さらには防犯カメラがあることに全く気が回らないまま、強奪品を故郷に送ってもいる。撤退を余儀なくされた軍の練度、統制の低さとともに、この点はある意味で、プーチンにも誤算だったかもしれません」

 おそるべきロシア軍の野蛮性こそ、ウクライナ侵攻の泥沼化に拍車をかけているというのだ。

*「週刊アサヒ芸能」4月28日号より。【後編】につづく

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