一見すると、殺し合いともとれる戦争にも実は国際法があり、使用が許される兵器とそうでない兵器があって、それを定めているのが「特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)」だ。
ところが11日、ウクライナ東南部ウフレダルで、ロシア軍が使用を禁止されている「9M22C」という“悪魔の焼夷弾”を落とした可能性があると、13日(現地時間)の英デイリーメールが伝え波紋を広げている。
「この映像はウクライナ軍が撮影、ウクライナ総参謀部が公開したもので、1万4000人が暮らす小さな村に光の粒になった無数の焼夷弾が降り注ぐというショッキングなものです。デイリーメールでは『プーチン露大統領がウクライナを地獄にするため、致命的なテルミット爆弾を使用していることが映像で確認された』と報じていますが、これが事実なら『焼夷兵器の使用の禁止又は制限に関する議定書』にある、市街地での焼夷兵器の空中投射を禁止する条約に完全に違反する行為。現段階でロシア側から正式な談話は出ていないようですが、また今回もウクライナによるでっち上げだと主張する可能性が高いでしょう」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)
実は、ロシアは昨年も数回にわたってこの爆弾を使用したとの疑いがあり、5月には英ザ・サンが、ウクライナ防衛軍が東部ドンバス地方で撮影したという映像を公開。さらに7月にもドネツク市中心部に焼夷兵器が撃ち込まれたとして、
「その際の映像にも、上空で散布され燃えながら落下する光の粒が多数みられ、その数などから総合して、間違いなくテルミット焼夷弾と断定されたと伝えています」(同)
デイリーメールやザ・サンなどの報道によると、使用されたのはアルミニウムと酸化鉄混合物テルミットが充填された焼夷弾で、落下時に発生する熱は最大摂氏3000度にもなることから「死の雨」あるいは「悪魔の武器」と呼ばれている激ヤバの殺傷兵器だという。
「一時期、大量殺傷が可能な非人道的武器として、白リン弾がクローズアップされたことがありますが、白リン弾の燃焼温度は最大でも摂氏800〜1000度。テルミット焼夷弾はその3倍の高温を発するわけですから、鉄だろうがコンクリートだろうが、いとも簡単に溶かしてしまいます。人間なら人の肌に触れた瞬間に骨まで溶かすほどの威力があると言われています」(軍事ジャーナリスト)
ウクライナは昨年来、ロシア軍がテルミット焼夷弾や白リン弾などの旧型虐殺武器を無差別に使用していると主張しているが、ロシア側はこれを否定。ウクライナの自作自演だとする水掛け論が続いている。
国際法無視の何が起こるかわからない“仁義なき戦い”はまだまだ続きそうだ。
(灯倫太郎)