ロシア軍「虐殺」の裏に「殺戮マシーン」養成システム【後編】ロシア国内からも批判の声

 ロシア軍の残虐行為をも自国民には「ウクライナの映像はフェイクニュース」と喧伝するプーチン大統領。それにしても、ここまで「奪う、犯す、殺す」が当たり前という〝殺戮マシーン〟はいかにして養成されるのか。その裏には、軍の暗黒面として連綿と受け継がれる、特殊な兵士の教育システムが関係しているというのだ。

「ロシア軍には伝統的に『デドフシナ』と呼ばれるシステムがあります。端的に言えば、しごきやイジメと言いかえてもいい。軍に入隊したばかりの新兵に対して拷問や集団リンチ、あるいは〝男同士の性暴力〟なども含め、あらゆる指導で徹底して精神を追い詰め、絶対的な上下関係を叩き込むんです。職業軍人はもとより徴兵された一般兵に対しても行われ、実はロシア国内でも疑問視されるほどの悪名高い慣習なのです。以前は『戦場での死亡者より自殺する兵士のほうが多い』とまで言われたほどでした。徴兵制度の改正時に見直しが検討されましたが、うやむやになり、いまだに軍内部にはびこっている悪癖です」(国際ジャーナリスト・山田敏弘氏、以下同)

 最大の仮想敵・アメリカの異色戦争映画「フルメタル・ジャケット」(87年)さながらの人格改造教育を施されることで、ロシアの若者たちは命令に完全服従する「殺戮マシーン」に変貌していくというわけだ。

「おまけにロシア軍は、司令官クラスが後方に控えず、最前線で指揮を執り自ら敵兵を攻撃するのが通例。この点も他国に比べ非常に前時代的で、そのせいで司令官を失い敗走することも多いのですが。残虐行為のハードルが低い要因として、上官が横で市民を殺害していたら、いかに葛藤があろうとも自分も同じことをせざるを得ない。そんな同調圧力もあるはず」

 一連のロシア軍の暴挙に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領(44)は、「これはジェノサイド(大量虐殺)だ」と痛烈に批判。その極め付きとも言える、ロシア軍がドローンによる化学兵器散布を行った、という情報も報じられる。

 日本でも有名なサリンが用いられたとされるが、真偽はいまだ不明のままだ。

「現代の紛争において、化学兵器の使用はタブー視されており、プーチン大統領とロシア軍への国際的な批判は日に日に高まるばかりです」

 現時点での正確な死者数は把握されていないが、少なくとも2万人を下回ることはないとも言われる。市民の返り血を浴び、自らもボロボロになりながら進むロシアの暴走はいつまで続くのか─。

*「週刊アサヒ芸能」4月28日号より

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