ロシアへの経済制裁発動以降、半導体の輸入は約7割減少、極超音速弾道ミサイルが製造できなくなり、地対空ミサイルなどの生産工場も閉鎖された—。
米財務省が14日、半導体輸出規制などの制裁効果で、ロシアでは戦車、ミサイルなどの製造が難しくなっているという報告書を公表した。
訓練されていない兵士をいきなり戦地に送り込むことで、脱走や投降が続き、ただでさえ士気低下が叫ばれるロシア軍。そんな状況で “弾切れ”となれば、客観的に見ても、もはや戦争という体をなしていないようにも思える。
さらにタス通信などが15日、ロシア国防省の発表として、ウクライナに隣接する西部ベルゴロド州の軍の訓練所で乱射事件が起き、11人が死亡、15人が負傷したと報道した。
「発表によれば、乱射した2人は旧ソ連11カ国で構成される『独立国家共同体』(CIS)の加盟国の出身。事件を目撃した軍人の証言を掲載した独立系メディアでは、原因は従軍を拒否したイスラム教徒の兵士と上官との言い争いによるもので、『自分たちの戦争ではない』と戦闘への参加を拒否した兵士に対し、上官が『これは聖戦だ』と発言。それに激怒したイスラム教徒の兵士が射撃場で銃を乱射したと伝えています。これが事実なら、同様の事件は今後も起こる可能性があり、内部規律がガタガタになっている軍の状況が透けて見えます」(軍事ジャーナリスト)
そんな中、ロシア在住の「北朝鮮労働者」が大量に脱走しているとの情報が流れ、波紋が広がっているという。
「報じたのは、米政府系放送『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』で、記事によると、現在ロシアの建設現場で働いている北朝鮮労働者が、仕事を放棄して身を隠すことが増えているというんです。消息筋の談話によれば、その理由が『次はウクライナの新しい建設現場に移動するというニュースを聞いたから』だと言うんです。確かにドンバス地方では、がれきの処理を含め、建設需要が高まっていますが、おそらく彼らは『次に動員されるのはあなたたちの番ですよ』と受け取ったのでしょう。おかげで、ウクライナから遠く離れた極東のウラジオストクにある建設現場では、労働者だけでなく現場の管理者も姿を消したと伝えられています」(同)
経済難にあえぐ北朝鮮にとって、友好国への労働者派遣は貴重な外貨稼ぎの手段。同時に、働く者にとっても家族に仕送りができるため、一家の生活を支える大きな手段だ。ただ、前出のジャーナリストによれば、
「国連安全保障理事会は17年の制裁決議で、加盟国すべてに対し北朝鮮労働者の新規受け入れを禁じ、発覚した場合は速やかに本国送還を義務付けています。とはいえ実際には、観光用や学生用ビザで入国するなど、制裁逃れが後を絶たないことは報告書でも明らかになっています。特に金正恩氏と蜜月にあるロシアへの労働者数は、他国に比べダントツに多いとされ、今回の戦争で侵略したウクライナの復興工事についても需要があったはず。しかし、ロシアが劣勢にある今、追い詰められたプーチン大統領が動員の手を伸ばすこともないとは言えない。出稼ぎのためにやってきた北朝鮮の人々にとっては、戦々恐々の日々が続いているはずです」
弾切れ、士気の低下、軍の内部崩壊。もはや何でもありのロシアの行く末は‥‥。
(灯倫太郎)