いよいよ、ロシアにとって大きな意味を持つ5月9日の「戦勝記念日」が間近に迫ってきた。
この戦勝記念日は、1945年5月9日にナチス・ドイツ軍の降伏がソ連を含む連合国によって受理されたことを記念したもので、ロシアでは毎年この日にモスクワで大規模な軍事パレードなどが行われている。
「ロシアでは、この日は第2次大戦で“ナチス・ドイツを倒して、ヨーロッパ・ユダヤ人を救った”日。すなわち『我々があるから今の欧州がある』ということを内外に大々的にアピールする日でもあるんです。そして今、ロシア軍は『戦勝記念日』を前に占領したウクライナの町に、第二次世界大戦の『勝利の旗』や『Z』マークを掲げている。ロシア国内では、そうした戦旗の映像を連日流し、“非ナチス化と平和のために我々は戦っている”と国内向けプロパガンダを展開しているのでしょうが、国土を蹂躙されたウクライナの人々にとって、これ以上の屈辱はないでしょう」(軍事ジャーナリスト)
そんな中、ロシア軍によるウクライナ侵攻のシンボルとして有名になった「Z」マークの意味が明らかにされ、波紋を広げている。これは、ロシアの国営テレビ局『第1チャンネル』のニュース番組が18日、戦勝記念日の特集を組んだ際に報じたものだ。
「実は『Z』は、ロシア語のアルファベットであるキリル文字には含まれておらず、ロシア政府もこの記号が何を意味しているのか明らかにしなかったため、さまざまな解釈がされていました。たとえば、『Za pobedy(勝利のために)』や『Zapad(西)』を表すとする説、あるいは戦車や装甲車などの車両などに書かれていることから、Zは『ロシアの東の部隊』、四角囲みのZは『クリミアから来た部隊』と識別することで、味方同士の誤射を防ぐためではないか、といった憶測を呼んでいたんです」(同)
ところがその謎が逆に相乗効果となり、いつしかロシア国民の中では今回の軍事作戦を支持するシンボルに。戦車や装甲車などへのスプレー書きに端を発して、親ロシア派の極右デモ隊の看板やTシャツ、さらにはロシア各地で「Z」をつけた車が出現。最近では、「Z」のシンボルを採用した企業も登場するなど、今や新しいロシアの国民的アイデンティティのシンボルとなったというから驚くばかりだ。
「第1チャンネルによれば、『Z』は数字の7を2つ上下逆さに組み合わせたもので、77回目の戦勝記念日を意味するといいます。また、米デイリー・ビーストの記者によると『プーチンはWWⅡ(第2次大戦)の終結を祝うためWWZを始めた』とし、それを戦勝記念日の5月9日までに勝利するというのですから、今後どのような強硬手段に打って出るかわからない。大きな犠牲が出ないことを願うばかりです」(同)
9日のパレードには軍人1万1000人以上が参加、ミグ29戦闘機8機が「Z」の文字を描きながら飛行するという。「戦勝記念日」で勝利宣言したいがための戦火拡大となれば、改めてプーチンの狂気を感じるばかりだ。
(灯倫太郎)