ロシア苦戦の要因は「中国製粗悪タイヤ」「すぐ撃ち落とされるヘリ」だった

 4月上旬、ウクライナの首都キーウ(キエフ)周辺から完全撤退し、東部2州の支配を優先する方針に転じたロシア軍。ウクライナのゼレンスキー大統領は18日、そんなロシア軍が「(東部2州が位置する)ドンバスでの戦闘を開始した」と述べ、2月下旬に始まったウクライナ侵攻がいよいよ新たな局面に入った、と伝えた。

 住宅街や森林地帯に囲まれたキーウ周辺と違い、大半が平地となるドンバスでは兵士が身を隠す場所が少ない。そのため、今後は短距離弾道ミサイルの撃ち合いや、戦車同士の戦闘になる可能性が高いとする見方が多いが、なんと、ロシア軍の戦果を左右するであろう、肝心な戦車がダメダメなのだという。

「現在、ロシア軍の最新の戦車はT90‐Aというもの。これは、1973年に正式採用された、旧ソ連の代表的戦車T-72のグレードアップ版で、中東諸国、アフリカ諸国、インドなどにも輸出されている人気モデルです。通常、対戦車ミサイルというのは、弾頭が戦車の装甲に当たって爆発すると、弾頭内部の金属が高温な金属塊となり、戦車の装甲板を焼き切り、貫くというもの。ところが、ロシア製の戦車は床下に弾薬庫があるため、対戦車ロケットの攻撃で誘爆しやすいのです。実はT‐72はロシア軍でもウクライナ軍でも現在の主力戦車ですが、くしくも今回の戦争で最大の弱点が明らかにされてしまいました」(軍事ジャーナリスト)

 さらには、地対空ミサイルを搭載した8輪トラックの車輪が泥にはまり、動かなくなったこともあった。この理由も、粗悪な軍用タイヤが原因だと指摘する声が多い。

「ロシアの8輪トラックによく使用されるのが、中国製の軍用タイヤ『Yellow Sea YS20 tires』。これはミシュラン社の軍用タイヤ「Michelin XZL war tires」の劣化コピーで、“戦場では極めて評判の悪い”タイヤとの評価も。トレッドパターンは本家と似ているものの、乾燥路ならまだしも、泥沼地では性能が著しく落ちるとされています。ウクライナ南部では使えたものの、凍結土が溶け出し泥沼化したキーフ周辺の北部の道では、いとも簡単に泥沼にはまり動けなくなったというわけです」(同)

 加えて、ロシア軍が使用する攻撃ヘリコプターも、ウクライナにはアメリカ製の「スティンガー」に代表される優秀な個人携行式地対空ミサイルが西側諸国から供給されているため、逆にミサイルの餌食になっている。

「兵器全般がそんな状態なのに、それに輪をかけてロシア軍の通信は筒抜けだと言われていますからね。一部では、軍内で最新鋭の軍用無線『アザート』が支給されているのはごく一部で、残り大半は民生用の古い無線機を使っているため、そこから作戦内容がダダ漏れしている、といった報道もあります。それが事実なら、いくら司令官に戦略家を起用しようが、兵士の士気が高まるなど到底無理な話ということになります」(同)
 
 加えて、今回の戦争は各国の軍関係者、並びに兵器市場にとっても、極めて重要な関心事。特にロシア製戦車を購入した国は頭を抱えているはずなので、今後武器輸入を敬遠する国が出てくることも考えられる。世界有数の武器輸出国という看板を掲げるロシア。その行方とは……。

(灯倫太郎)

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