国際詐欺グループ「高額人身売買」の実態(1)日本人高校生と中国人俳優が

 なぜ日本人はこんなに騙されるのか。24年にはSNS型投資・ロマンス詐欺の被害額が1268億円に達し、特殊詐欺と合わせて2000億円に迫ろうとしている。最近は警察官を騙る詐欺電話が横行しているが、スマホの向こうにいる「掛け子」もまた、非道な「高額人身売買」の被害者かもしれない。

「ミャンマーの一件は中国政府から圧力がかかり、仕方なく摘発劇を演じただけ。あくまで体(てい)ですよ。詐欺組織は今も普通にミャンマーからカンボジア、ラオスなどに拠点を移して活動している。各地域を仕切っている警察なり、軍隊にカネをばら撒けば何でもありの国々なので」

 こう証言するのは、「在日中国人系不良勢力」の大物A氏だ。

 今年2月、ミャンマー東部の国境付近にある特殊詐欺の拠点「KKパーク」が摘発を受け、日本人高校生2名が保護されたこともあって、大きな話題となった。A氏のもとには、摘発後も中国系犯罪組織の人間から頻繁に連絡が入るという。このKKパークでは1万人以上の外国人が拘束されていたが、その約半数を中国人が占め、タイで拉致された中国の人気俳優もその中に含まれていた。

「組織を実質的に取り仕切っているのは大陸系の中国マフィア。今も世界各国の“同胞”を通じて、リクルート活動に余念がない。ある現地のボスは、『詐欺商売は人が宝』なんて、まるで老舗企業の社長のようなことを言ってましたね」(A氏)

 そもそも、なぜ中国マフィアが国際詐欺グループのトップに君臨しているのか。

「中国人は大昔から世界中に散らばって、各国にチャイナタウンなどのコミュニティを形成してきた。日本にも80年代後半以降、留学生やらビジネスやら、あるいは密入国と形は違えど、多くの中国人がやって来て、一定数が永住化。彼らの一部は怒羅権(ドラゴン)などのマフィア的勢力となり、日本の裏社会でも一定の力を持つにいたった。90年代になると、大陸の中国人マフィアも進出して、強盗、窃盗、薬物売買など、さまざまな悪事に手を染めていった。これは日本だけではなく、世界共通の現象だ。人海戦術で世界中に拠点を築き、今回たまたまミャンマーの一部が摘発されたに過ぎない」(A氏)

 そんなA氏のもとに昨年末、SNSを通じてこんなメッセージが送られてきた。

〈兄貴、お久しぶりです。以前、日本でお世話になった〇〇です。いま、ミャンマーでちょっとした商売をしておりまして、ご協力いただけたら兄貴にも相当な分け前をお渡しできます〉

 送り主は、かつて日本に密入国していたA氏の“弟分”だった。用件は「人材派遣」の要請で、募集要項には〈ミャンマー東部の開発〉〈幹部候補希望〉とあった。仲介料は「営業経験あり」で300万円、経験や能力がなくても100万円。破格の報酬は地下銀行を通じて即金で支払う取り決めになっていた。

フリーライター 根本直樹

(つづく)

*写真はイメージ

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