「台湾有事2027年説」が国際社会で注目されている。これは、中国が27年までに台湾への軍事行動を起こす可能性があるという予測だ。期限が注目される背景には、軍の急速な近代化、習近平政権の動向、台湾と周辺国の危機感がある。
27年説は、米国の安全保障関係者からの警鐘に端を発する。21年、米インド太平洋軍司令官(当時)が、中国の軍事力増強が予想以上の速度で進んでいると指摘。AIや先端半導体を活用した「デュアルユース技術」の進展により、27年頃には中国が台湾侵攻に十分な軍事力を整える可能性があると分析。この発言が、27年を具体的な危険ラインとして印象づけた。
習近平国家主席の政治的動機も、27年説が出るポイントとなっている。習氏は長期政権を確立し、27年は4期目への移行の節目となる可能性がある。この時期に、「台湾統一」を掲げることで国内支持を固め、共産党の正統性を高める狙いがあるとされる。また、27年は中国人民解放軍の建軍100周年であり、軍は「情報化・スマート化」を柱に、軍事力の飛躍的向上を目指す。このタイミングで台湾海峡での軍事行動を可能にする能力が整うとの見方だ。
中国の軍事力の急成長も、27年説を支える要因だ。中国海軍は艦船数で米国を抜き、25年までに400隻、27年には4つの空母打撃群を運用する計画だ。サイバー戦や情報戦の能力も強化し、台湾有事では日本を含む近隣国への脅威となる。中国が全面戦争を仕掛ける可能性は低いものの、局地的な紛争や封鎖作戦の準備が進むとされる。
一方の台湾も、27年を意識した動きを見せる。25年の「漢光演習」では、27年の中国侵攻を想定した大規模演習を計画し、防衛力強化に取り組む。日本では、「台湾有事は日本有事」との認識が広がり、政府は台湾海峡の安定性を重視。地理的・経済的につながりから日本が紛争に巻き込まれるリスクが高いとされ、日米同盟の連携が強化されている。
「台湾有事2027年説」は、は中国の軍事力増強、習近平政権の政治的意図、米台日の危機感が交錯して生まれた。中国の軍は27年、建軍100周年を機に能力を大幅に向上させ、習氏の政権は節目を迎える。ただし、これは確定した予測ではなく、軍事バランスが変化する「危険な節目」として警戒されている。日本を含む国際社会は、軍事的備えと外交努力で緊張緩和に努める必要がある。
(北島豊)