中国が「ロボット・キックボクシング試合」で見せつけた技術進歩と「軍事転用可能」

 中国人留学生らが、アメリカが持つ頭脳や技術を中国に持ち帰っている、として、ハーバード大学から同留学生らの締め出しを目論むトランプ米大統領。一方の中国が今、頭脳と技術を駆使し、国を挙げて取り組んでいるのが、人型ロボットの開発だ。

「中国では今年初めに『ディープシーク』が開発した国産の大規模言語モデル『R1』が世界に衝撃を与えたことで、現在は多くの国内EV企業が続々ロボット開発参入に名乗りを上げています。巨大な消費市場を抱える中国では、いかに迅速に技術応用できるかが、成長するカギを握っている。そして投資家らも有望な投資先が見つかれば、そこに巨額な資金を投入し、必然的に新規参入が大量発生することから裾野が広がることになる。そんなことから、ロボット開発の領域でも近い将来、中国企業が世界をリードしていく日が来るのではないかといわれています」(経済部記者)

 5月29日、そんな中国の近未来を予測するかのような、世界初のヒューマノイド(人型ロボット)同士が戦うキックボクシング大会が中国浙江省杭州市で開催され、話題になっている。この大会を開催したのは、中国の公共放送機構であるCMG。試合に出場したのは、浙江省杭州市に本社を置くロボット企業「ユニツリー・ロボティクス(宇樹科技)」の人型ロボット「G1」4体だ。

「中国メディア『人民網』によれば、G1は身長が122センチ、体重が約36キロと、人型ロボットとしては小柄なタイプで、試合は1R2分で行われ、3Rのポイントの合計で勝者が決まるポイント制。まだパンチ、キックともに威力がなく改良点は多いものの、攻撃を受けても倒れず、足でバランスを保ち転倒しても床に手をついて自力で立ち上がるなど、その滑らかな動作は人間さながら。ロボットのトレーニングはすべてAIによって行われたそうで、試合の様子は国営テレビでも放送され、大きな反響があったとのことです」(同)

 SNSに投稿された動画では、グローブとヘッドギアを付けた人型ロボットが、ジャブやストレートなどを駆使し、時には相手にヒザ蹴りを炸裂させダウンを奪うといったシーンもある。ただ、この映像に対して賛否両論の意見があり、《中国の技術力を日本も見習うべき》《これが未来の格闘技スタイルになるかもしれないね》といった声がある一方、《即ロボット兵士に軍事転用できるだろ、笑えない映像だ!》《このロボットに機関銃と爆弾が搭載されたら脅威だ》《映画ターミネーターががぜん現実味を帯びてきた》といったネガティブな声も続出することに。

「中国がどのような意図をもってこの映像を放映したのかはわかりませんが、映像を見るだけでも中国のロボット開発技術がいかに目覚ましい進歩を遂げているのかかが見て取れる。むろん軍事転用も可能と思われるため、仮に有事が起きた場合、このロボットたちが一団となって攻め込んでくる、というシミュレーションも絶対にないとは言い切れない。もしかしたらトランプ氏がハーバードから中国留学生を締め出した背景には、そういった巫山材料を取り除きたいという裏事情があったのかもしれませんね」(同)

 現状、ロボットによる攻撃は国際法で禁じられているが、実際の戦争ではそれに近いことが行われている。SFのような侵略戦争が起こらないことを願うばかりだ。

(灯倫太郎)

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