11月25日に南アフリカで検出された新型株の「B.1.1.529」。これまでで一番激しい変異を経た株で、「ワクチンの効果を低下させる」などと見られているが、世界保健機関(WHO)は26日にこれを「オミクロン」と命名。すると「中国への忖度ではないか」との報道がなされた。
「WHOではこれまでの新しい変異株をギリシア語のアルファベットの順に従って命名してきましたが、今回は本来なら変異株の名前となるはずのアルファベットを2個飛ばしたからです。今までに使われたのは12番目の『ミュー』までなので、次は『ニュー』になるはず。ところがこれだと英語の『new』と混同されるため1つ飛ばすと次は『クサイ』。ところがクサイの英語発音は『xi』なので習近平の“習”の英語発音の『Xi』と被ってしまう。だからもう1つ飛ばしたオミクロンになった。だからもともと中国には弱腰のWHOが忖度したのではないかというわけです」(週刊誌記者)
これに対しWHOは特定の文化や社会、国などを指すものであってはならないと説明。いずれにせよ、新型株はオミクロンに落ち着いた。
名前は落ち着いたのはいいが、株価は大きく落ち込んだ。
「オミクロン発見前の25日の日経平均終値は2万9499円だったものが週末を挟んだ29日の終値は2万8283円で、約1200円も下げました。当然、新型株の登場で景気が先行き不安になったことがその理由で、29日の午前には岸田首相が全世界を対象とした入国制限を30日から行うとしたことからさらに売り圧力が強まりました。結果、自動車や素材、陸運・空運などを中心に、実に東証一部上場企業の9割の株価が下がりました」(経済ジャーナリスト)
ほとんどが下げる中、一方で「巣ごもり需要」の高まりに期待が集まり、半導体関連やゲーム、陸・空運がダメな代わりに海運がひっ迫するとの見方から海運株は逆に上げた。これが残りの1割だ。
そんなものじゃなく、逆に10倍もの値がついたのが、暗号資産の「OMIC」(オミクロン)だ。
「26日は70ドル程度だったものが、27日には700ドルまで急上昇したんです。もちろん理由は名前が同じという注目度だけで、その中身は不合理なものです。一方、ビットコインは11月10日につけた最高値から20%も下げていて、こういった乱高下は暗号資産がいかにバブル的な状況であるかを示しています」(前出・ジャーナリスト)
名前1つで各方面に多大な影響を与える辺り、コロナの脅威度を示すエピソードと言えるだろう。
(猫間滋)