マネーロンダリングの最先端のからくりについて、A氏が解説する。
「モネロなどに変換後、ミキシングサービスを利用してさらに匿名性を高めることが多い。このサービスを利用すれば、複数のウォレットのトランザクション(取引記録)を混ぜ合わせ、保有者の匿名性をよりいっそう高めることができる。ミキシングサービス業者は逮捕されるケースが後を絶たないが、世界には無数の業者が存在し、手数料で荒稼ぎしている」
〝悪い奴〟らは金のにおいを嗅ぎつけて群がってくるようで、マネーロンダリングのやり方の中には、どこにも所属していない「フリーランス」のサポート業者が存在していた。井上氏はこう話す。
「マイナーな暗号資産を大量に購入すれば、マネーロンダリングをしていると疑われやすいので、『アテンド』と呼ばれるプロがいて、複数の暗号資産をどれだけ購入すれば不自然ではないのか、うまく分散しながら手配、手続きを代わりにやってくれると聞きました。他にも『ミキサー』と呼ばれるプロは、マイナーな通貨の買い替えをする時に、取引証明書を偽造してくれるそうです。彼らに頼めば手数料はかかりますが、依頼者は何も関わっていないように振る舞えるので、警察に目をつけられにくくなります」
凶悪犯罪で被害者から巻き上げた金はどんなルートをたどっているのか─。
「資金洗浄の『出口』はビットコインです。ウクライナや南アフリカでは、街角のATMでビットコインを現金化することが可能。日本人が現地まで行くこともあれば、日本にいるウクライナ人に頼んで、現地に住む彼らの親戚にアルバイトで頼むことも。いったん引き出したキャッシュを新たなウォレットに入金すればもはや追跡は不可能だ。クリーンになっているし、その場でビットコインに換えて、再び価値が高騰するまで眠らせておいてもいい」(A氏)
さらに、犯罪収益を暗号資産でマネーロンダリングするワケには、こんなメリットもあった。北芝氏が指摘する。
「トクリュウの犯行で、億単位の被害が出ています。警察の捜査で指示役を捕まえたとしても、奪われたお金が複数の暗号資産に分散して保管されていたら、すべての金の流れをつかむのは難しい。刑期を務めて出てきた時には、押収されていない暗号資産が高騰し、大儲けしているかもしれないのです」
青天井のビットコインに刺激され、トクリュウの犯罪がこれより狂暴化しないことを願うばかりだ。
*週刊アサヒ芸能12月5・12日号掲載