サッカーの本田圭佑が引退後のビジネス展開を睨んでか、個人ファンドを通じて出資しているドローンビジネス。これまでは空中撮影や農業活用が主だったが、その用途は拡大、「空の産業革命」とも呼ばれている。
そんなドローンの国内最大の展示会「ジャパン・ドローン2019」が、3月13〜15日に幕張メッセで開催された。商用に特化した展示会なので、各メーカーやエレクトロニクス産業が出店しているのは当然として、目立ったのはNTTやドコモ、KDDI、ソフトバンクの携帯キャリア企業の出店だった。なぜか。
例えばKDDIは2016年に「スマートドローン」の構想を発表しているが、これにより、それまではWi-Fiでしか行えなかったドローンの制御が、LTEを利用することでより広いエリアで行え、かつ、機体から回収するしかなかったデータを直接確認できることになる。つまり、ドローンがより高度に商用化された場合、機体を制御するシステムが必要になるが、既に携帯通信会社として基地局を多数保有している携帯キャリアであれば可能だということだ。
したがって、電波が届く範囲内なら屋外でも、ドローンをセンサーデバイスとしたIoTにしてしまおうという発想が成り立つことになる。NTTやドコモ、ソフトバンクも同じ発想の取り組みを行っており、今年からドローン活用のプラットフォーム・サービスの提供を開始する予定だ。
その場合、圧倒的に活用されるのが「検査・点検」の分野だ。ビルや工場、橋、トンネル、発電所、ソーラーパネルなど、これまでは人間が目視するには大がかりで危険な足場を組んだり、それこそ飛行機やヘリを飛ばすしかなかった作業が圧倒的に簡便化する。民間企業の調査では、分野別ドローン活用の市場規模を見ると、検査の分野は2018年に38億円だったものが、2024年には970億円となっている。農業がそれぞれ175億円、760億円なので、その伸びがいかに大きいかが分かる。ちなみに、だれもが思いつく空撮の分野はそれぞれ20億円、88億円と、伸びはわずかだ。
もともとドローンは「電波」で飛ばすために携帯キャリアとの相性が良かったというのが前提としてあるが、背後にはキャリア各社の台所事情も窺える。そう、菅義偉官房長官が言い出した携帯料金の値下げだ。
国民1人にスマホ1台社会で、スマホはもう世の中に行き渡ってしまった。さらには格安携帯もあって、通信事業自体の“上がり”はたかが知れている。そこで数年前からキャリア各社では生活・電子商取引・AI家電などの分野での経営多角化が進められている。ドローンビジネスに携帯会社が注力するのも、携帯会社が携帯会社でなくなる日が近づいているとも言えるのだ。