3月下旬、イギリスの政府関係者はメディアに対し、中国が新型コロナウイルスに関して誤った情報を拡散し、自国の感染者数について嘘をついていると非難。「感染の危機が落ち着いたら中国は必ず“報い”を受けるだろう」と語っていたが、それが現実のものとなってきた。
英紙「デイリー・テレグラフ」電子版は23日、ジョンソン英首相が第5世代(5G)移動通信システムに、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)の限定採用取りやめを検討している、と報じた。
「2033年までに全戸に光ファイバーを供給する、という目標を掲げていたジョンソン政権が5G市場をめぐる覇権争いでリードしてきたファーウェイに参入容認の姿勢を示したのは、今年1月。ただ、保守党は国家安全保障上の懸念があるとして、かねてからファーウェイ製品の排除を求めていました。そこでジョンソン政権は、使用割合を最大35%に制限し、特に機密性の高い部分への使用を禁じる形で、保守党と折り合いをつけていた。そんな中、イギリス国内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、首相自身も命の危険にさらされてしまった。ところが、こともあろうに中国は自国の感染者数を偽っただけでなく、デタラメな情報を拡散し、結果的にウィルスが世界中に広がったというのが共通認識。感染者の一人で危うく命を落としかけたジョンソン首相としては、中国の対応はまさに”ふざけるな”の一言に尽きるのではないでしょうか」(国際政治ジャーナリスト)
しかも、一部とはいえ、自国におけるインフラ向上の大きな役割を同社に与えることで、同盟国であるアメリカのトランプ大統領を怒らせてしまった、という引け目もある。
「イギリスの決定はドイツやロシアに続くものですが、ファーウェイ完全排除を要請していたアメリカは猛反発し、マイク・ポンペオ米国務長官がジョンソン首相と会談して、再考を促したのですが、ジョンソン首相は耳を貸さなかった。結果、トランプ大統領はジョンソン首相に電話で反対の意を伝え、カンカンになって、その電話を切ったと報じられています」(前出・ジャーナリスト)
一時はICU(集中治療室)に入るほどの深刻な病状に陥り、トランプ大統領にマジ切れされるとは、まさに踏んだり蹴ったりのジョンソン首相だが…。
「中国は世界経済をメチャクチャにしたにもかかわらず、何もなかったかのように日常を取り戻そうとしている。メンツをつぶされたジョンソン首相は怒り心頭のはず。その報復の表れが、今回のファーウェイ導入ドタキャンにあることは間違いないでしょうね」(前出・ジャーナリスト)
報道によると、2023年までに英国内の5G通信網などにおける中国メーカーの関与をなくす計画を立案するよう、関係部局に指示。欧州のEU諸国も同調して欲しい、と要請したと伝えられている。
EU諸国による反ファーウェイ逆包囲網が広がる日も近い!
(灯倫太郎)