「科研費申請」に“外国資金”申告義務化!? ネットから消えた「千人計画」の謎

 菅首相が会員候補6人の任命を拒否したのは日本学術会議だが、これと似た名称で日本学術振興会という組織がある。文科省所管の独立行政法人で、学術研究の助成、研究者育成の資金の支給などを行っているところだ。研究者の間では「学振」と呼ばれ、そこから資金的にも援助を受けているので、政府に足を向けて寝られない。

 そういう組織だからもちろん“明朗会計”でなければならず、助成を受けた費用の中身はチェックされる。ところが1月下旬、こんな見出しの記事が全国紙に掲載された。

《科研費申請 外国資金の記載義務化 文科省、技術流出阻止へ》

 研究者が文科省に科学研究費補助金を申請する際、他に外国から研究資金を得ている場合は申告するよう義務化されるという。申告に漏れや虚偽があれば、支援先として不採択もしくは採択を取り消されることになる。つまり、研究スポンサーに外国の影があれば今後は国として把握するということだ。

 なぜそうなったか。トランプのアメリカがファーウェイをアメリカ国内から排除したあれと一緒だ。最新テクノロジーや知財を巡る国際競争で外国を利することのないよう、せめて水際で金の出どころの実態くらいは把握しておかねばならないからだ。特に中国を対象として。

「この文科省の動きを伝えた大手紙は、中国への情報流出への懸念が背後にあると分析して『千人計画』の存在に言及しています。千人計画はその名の通り千人レベルの大量の優秀な研究者を中国に集めて、中国国内の学術研究レベルを上げて科学立国として技術分野での覇権を握ろうという制度・計画です」(経済ジャーナリスト)

 計画が始まったのは08年。華僑として国内の優秀な頭脳が海外へ流出しているのを防ぎ、ついては外国の頭脳も中国に集結させようというものだ。特に昨年になって話題となり、「週刊新潮」が大きく取り上げたこともある。「過去の資料」によると、運営は中国共産党の人事部に当たる組織が行う。対象となるのは55歳未満の中国人学者と65歳以下の外国人学者、ノーベル賞などの受賞者だ。これに選ばれたら政府が認定、採用されることになる。18年までの10年間で7000人が実際に集められ、日本でも東大や京大の難関国立大学、早稲田などの一流私大でも募集が行われている。

 ところで、上で「過去の資料」とかっこ付にしたのには訳がある。計画が公の場から消えたからだ。

「特にアメリカとの知財紛争が表立ったものになって日本も今回の措置を講じる事になったわけですが、中国でも計画の存在が多くの人に知られるのはマズいと思ったのでしょう。昨年4月ごろにネット上から公式のホームページが消されたのです。中国国内で使われてる検索サービスのバイドゥを使っても『検索結果は見当たりません』との表示が出るなど、“なかったもの”にされているのです」(前出・ジャーナリスト)

 またぞろ中国の怪しい魂胆が垣間見えるエピソードだが、隠すということは隠すだけの意味があるということを逆に物語ってはいまいか。

(猫間滋)

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