「基礎よりも実戦」佐々木の育成方針を転換させたロッテのチーム事情

 令和の怪物がコロナ禍の閉塞感を解消してくれるかもしれない。

 6月19日の開幕戦決定が発表された5月25日、千葉ロッテの井口資仁監督がオンライン取材で令和の怪物・佐々木朗希投手の“実戦デビュー”を明言した。

「投げるとすれば、一軍の試合です」

 6月2日から12球団は練習試合を行う。まだ各球団とも対戦カードを決めていないため、いつになるかは分からないが、佐々木は5月に入ってすでに3度のブルペン投球を行っている。そこからの状況次第では先発というのが周囲の一致した見方だった。しかし、千葉ロッテは佐々木の育成について、プロ1年目は基礎体力の強化としていたはず。「実戦登板もごく僅かになる」と予想されていたが、「お披露目を兼ねて公式戦の一軍登板も!?」という声も出始めた。その通りになれば、育成プログラムの完全な変更だ。

「斉藤惇コミッショナーが会見で明かしているように、ペナントレースは120試合ほどになるでしょう。開幕ダッシュに成功したチームがそのまま優勝ということになりそう」(プロ野球解説者)

 最速163キロ右腕・佐々木のお披露目はチームを勢いづける狙いがあるかもしれない。しかし、理由それだけではないようだ。

「千葉ロッテは昨年度、赤字経営から脱却し、ようやく黒字に転じました。昨秋あたりから『黒字になるぞ』という前向きな雰囲気のなか、ドラフト1位できたのが佐々木でした。新人自主トレ期間中の今年1月に『佐々木グッズ』を売り出し、完売させたときは球団としてもニンマリだったそうです」(球界関係者)

 佐々木は、球団にとって“明るい未来”の象徴とも言えそうだ。基礎体力が出来上がるまでは無理をさせないという育成プログラムを変更させたわけではない。5月26日にはプロ入り後初となる実戦形式のシート打撃練習に登板。よほど投げたくてウズウズしていたのか、最速160キロのボールで打者3人中2人から三振を奪う快投を見せた。井口監督はコロナ禍でチーム内に漂う閉塞感を佐々木で一変させたいようだが、それは日本の球界全体が思っていることでもある。

(スポーツライター・飯山満)

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