企業のグローバル化が進む現在、拠点を海外に構えるケースは珍しい話ではないが、とりわけ多いのが中国企業。人気なのはシンガポールで、10年代半ばから急増。すでに500社以上が本社を移転している。
しかも、拠点を設けている顔触れは23年の通信機器市場で世界シェア1位となったファーウェイをはじめ、モバイルアプリ事業の収益が世界一のテンセント、本社移転では日本でも人気の通販サイトを運営するSHEINなど海外でも高い知名度を誇る大企業が少なくない。
「シンガポールは法人税率が17%と世界的にも低く、他にも税制面でいろいろと優遇されています。また、中国企業にとって東南アジアは大きな海外マーケットで、自国だけでなくインドやオーストラリアからも比較的近い。海外展開を行う企業にとっては立地的なメリットもあります」(経済誌編集者)
ただし、中国企業の海外移転の目的はこれだけではないという。
「東南アジアは中華系が多い地域ですが、それでもイメージは日本企業のほうがずっと高く、一種のブランドとなっています。一方、中国企業に対しては『品質がイマイチ、サービスも悪い』と思っている人が未だに多い。グローバル化を目指すうえで大きな足かせになってしまうため、海外移転によって払拭させようと“偽装”するわけです」(同)
また、中国はバブルが崩壊して経済が停滞。そうした状況下で自国に本社を置くのを避けたいとの狙いもあるらしく、中国企業の海外移転は当分続きそうな勢いだ。
「以前から“脱・国内市場”が大きなキーワードとなっており、対中関係が悪いインドにも積極的に進出しています。しかも、中国企業のこうした海外移転は本社に加えて工場でも同じことが起きており、それに伴い大量の失業者を出し、大きな問題となっています」(同)
自国企業の国外流出が長引く不況から中国経済が回復できずにいる要因のひとつになっているのかもしれない。