「半導体規制」が逆効果!?「技術大国化」する中国に米メーカーが戦々恐々

 米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席が11月15日、約4時間にわたって会談した。約1年ぶりとなった米中首脳会談のポイントは主に2つ。バイデン氏が「台湾海峡の安定」を提起すれば、習氏は「半導体などの対中規制を撤廃してほしい」と要求した。

 世界はいま、半導体をめぐって国家存亡の戦いを展開している。

 今年8月、世界の半導体産業に襲撃が走った。中国通信機器大手の華為(ファーウェイ)が対中輸出規制を受けながら新型スマートフォンを売り出し、そこには規制対象の回路線幅7ナノメートル以下の高機能半導体が使用されていたからだ。

 米商務省は初め、オランダ、韓国、台湾などの半導体先進国から規制の網をかいくぐって入手したと考えた。ところが、この先端半導体は間違いなくファーウェイが自前で開発したものと確認された。対中禁輸措置が発効してからわずか1年後のことである。

 この状況を米シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)は「規制が遅すぎたため」と分析しているが、果たしてそうであろうか。中国を孤立させたことで、かえって技術革新を促進させたのではないか。

 思い出すのは1980年代の日米貿易摩擦である。当時、米国の対日貿易赤字が過去最大となり、通商摩擦に発展した。その中心となったのが、自動車だった。ジャパンバッシングが吹き荒れ、全米自動車労働組合(UAW)の組合員による日本車をハンマーで叩き壊すパフォーマンスは、後に日本の教科書に載ったほどだ。

 これらの影響で、日本の自動車メーカーは対米輸出台数の自主規制に追い込まれた。アメリカに生産工場を造り、雇用を創出するよう求められた。また、日本車の優位性を逆手にとって、企業別平均燃費基準(CAFE)制度が強化された。

 CAFEとは、車種ではなくメーカー全体の出荷台数に応じた平均燃費を算出して規制をかけるというもので、日本車にとっては不利な制度だったのだ。

 ところが、こうした米国の保護主義的な政策に対応しながら、日本のメーカーは研究開発を進め、技術力を伸ばしてきた経緯がある。

 翻って、米国の対中半導体輸出規制である。規制は拡大しているが、最近ではインテルのCEOが規制緩和を求めるなど、“世界最大の市場”を喪失するとして米国の半導体メーカーが音を上げ始めているのだ。

 いずれにしても、中国は米国の技術を頼らずに先端半導体を自前で調達することに成功した。かつての日本の自動車のように、規制をクリアしながら一段と強くなる可能性がある。

(団勇人・ジャーナリスト)

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