習近平の圧に負けた!? 岸田総理「相手の反応は明かせない」コメント固辞の理由とは

 日本時間の11月17日午後8時40分過ぎに開催された日中首脳会談。およそ3年ぶりに行われた会談の冒頭、習近平主席は「私は岸田総理と対面で会談することができて、非常にうれしい。新時代のニーズに合った中日関係を築きましょう」と笑顔で語り、岸田文雄総理と握手を交わした。

 45分間の会談を終えた岸田総理は、記者団の問いかけに対し、習主席の発言や反応などの詳細については明言を避けた。そして、「日中関係の大局的な方向性とともに、課題や懸案、協力の可能性について、率直かつ突っ込んだ議論ができたと感じています」と、当たりさわりのないコメントだけを述べたのだった。

 政治部記者が語る。

「首脳会談というのは、まず、冒頭の首脳同士による顔合わせが、両国の現在置かれている立場を示す意味でも重要なポイントになります。特に、中国や北朝鮮、ベトナムなど社会主義国同士の首脳が会う場合、コロナ禍前には必ず固くハグし、相手を抱きしめることが通例で、これが親密な関係であることを表していました。さらに、首脳が『笑顔を作る』というのも大きなポイントで、中国外交ではトップが笑う、笑わないは、主席本人の意思でなく、国家レベルで決められていることなんです。つまり、今回、岸田氏に対し、穏やかな笑みを浮かべ握手する、という習主席の振る舞いが、バイデン大統領との会談時のそれと同程度だったと考えると、中国における日本の重要度が上がったという意味合いがあり、そんな自信のようなものが岸田総理の会見でも見て取れました」

 一方、首脳会談で、「習主席から説教された」などと、メディアで大きく報じられたのが、16日に習主席と会談を行ったカナダのトルドー首相だ。

「実は2人は、前日におよそ10分間の非公式会談を行い、トルドー首相は中国がカナダの選挙に干渉した疑惑について懸念を示したようなのですが、非公式会談ですから、当然公表していなかった。ところが、翌日には複数のメディアが報道。これを受け、習主席は『我々が議論したことがすべて新聞にリークされた。それは不適切だ。そのような話の方向にはなっていない』と、トルドー氏に抗議したのです。そんな姿がSNSで拡散して、ちょっとした騒動に発展しましたね」(前出・政治部記者)

 実は、カナダと中国の関係はここ数年、良好とは言えない状態だった。ことの起こりは2018年12月、カナダ当局がアメリカの要請を受け、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」最高幹部を、詐欺の疑いでバンクーバーの空港で逮捕したことだった。この措置に中国側が強く反発し、直後に、中国当局がカナダ人2人を拘束、うち1人に対して実刑が言い渡されたのだ。

 昨年9月には、米司法省との司法取引に応じた最高幹部は釈放となり、中国で拘束されていたカナダ人2人も解放されたが、カナダ政府は安全保障上の懸念を理由に、本国からファーウェイを「5G」の通信網から排除する方針を明らかにしたことで、両国の関係は修復されないままでいた。

 そんな状況の中で起こった、G20サミットという公の場での習主席の「説教」だったのだ。

 だからかどうか、岸田総理は記者団の問いかけに対し、「先方の発言については詳細を私から申し上げるのは控える。これは国際会議の常識であります。相手の反応は申し上げません」と強調していたものだ。

 まさか岸田総理が、「自分も習主席に怒られてはたまらない」と思ったわけではないだろうが…。

(灯倫太郎)

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