トランプのウクライナ和平交渉に激震!ゼレンスキー排除の真相とプーチンの思惑

 トランプ・ショックが止まらない。2月18日、サウジアラビアで開催された米露外相級協議。報告を受けたトランプ米大統領は、「戦争終結に向けたロシアとの交渉はとてもうまくいっている」とし、改めてウクライナや欧州抜きでの協議に自信を覗かせた。

 さらに会見で、ゼレンスキー大統領が会談から外されたことに不満を漏らしている、と質問されたトランプ氏は「この席(交渉テーブル)に座りたいなら、先に長く選挙がなかった点を認めなければならないのではないか」とした上で、「3年間その職にいて、3年過ぎたら戦争を終わらせなければならなかった。最初から始めるべきではなく、交渉しなければならなかった」と、侵略したロシアではなくウクライナに開戦の責任を転嫁。さらに自身のSNS「トゥルース」にも《ゼレンスキー氏は選挙を実施しない独裁者だ。ぐずぐずしているとウクライナはなくなってしまうぞ》と警告。《同氏は選挙を拒否している。ウクライナ国民の支持率は4%と非常に低い。同氏が優れているのは、バイデンを『バイオリンのように』操ることだけだ》とバッサリ切り捨てた。

 この発言にゼレンスキー氏も即座に反応。翌19日に出演したテレビ番組で、支持率1ケタ台だとするトランプ氏の発言を、「トランプ氏はロシアが作り出した偽情報の空間に住んでいる」と批判。「誰かが私を追い出して別の人物を大統領に据えたくても、今それは成功しない」として、ウクライナ抜きで結ばれた和平合意には一切従わない考えを示した。

「昨年12月の世論調査によれば、ゼレンスキー氏の国政支持率が52%だとされ、トランプ氏が何を根拠に4%しかない、と発言したかは不明です。ただ、トランプ氏は以前から『ゼレンスキー氏は米国からの支援の半分が、どこに行ったか分からないと言っている』などと主張。戒厳令下で、バイデン政権が昨年5月に任期が切れたゼレンスキー氏の任期が延長を容認、最高会議の選挙も延期されていることを一切不問にしてきたことを批判していたこともあり、今回の恫喝発言にも、そんな背景が見てとれますね」(国際部記者)

 たしかに、米国をはじめとした西側諸国は、ロシア侵攻が始まった2022年2月から、軍事支援以外にも人道支援を含め、毎月25億ドルから35億ドルの財政支援をしてきた。

「米シンクタンクの試算によれば、その総額約1100億ドル(17兆円)で、これは2021年、つまり侵略前のウクライナの国内総生産2000億ドルの約半分に相当すると言われています。そして、巨額な支援が権力者にとって、ある意味で大きな利権となったことは間違いない。言い方は悪いですが、それを手にした権力者たちが、その立場を手放したくない誘惑にかられるのは当然のこと。もともとウクライナでは日常的に汚職が行われゼレンスキー氏も根絶に尽力したものの、相変わらずの状態が続いていますからね。トランプ氏は、そんなウクライナの現政権に苦言を呈したということでしょう」(同)

 一方、プーチン氏の狙いは選挙を通じてゼレンスキー氏を追放し、ウクライナに親ロ・親プーチン政権を樹立することにある。戦争を1日でも早く終わらせたいトランプ氏と、ゼレンスキー氏を失脚させ傀儡政権を起立したいと願うプーチン氏。そうなるとトランプ氏のディール相手は、第一がロシアで、第二はEUとNATO構成国となり、合意を急ぐトランプ氏がロシアが考える提案を受け入れる可能性も否定できない。

「ゼレンスキー氏としては、そこに危機感を募らせているわけですが、停戦となれば戒厳令が解除され、動員令も解除されることになり、近々に大統領選挙が実施されるはずです。むろん、ゼレンスキー氏も大統領選挙出馬が可能ですが、先行きは不透明と言わざるを得ない。ともあれ、プーチン氏とトランプ氏との会談の行方が注目されます」(同)

 さて、戦争の早期停戦と、ゼレンスキー大統領失脚問題が行き着くゴールとは…。

(灯倫太郎)

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