トランプ氏は緊迫の台湾情勢にどう関与するのか「2つのシナリオ」

 トランプ政権が発足する。政権にとって最大の外交課題は“対中国”だが、紛争が続くウクライナや中東についてトランプ氏は終了させることに強い意欲を示しており、まずはこの2つの紛争問題に取り組んでいくことになろう。イスラエルとハマスとの間で停戦が始まったが、これもトランプ氏が盟友のイスラエル・ネタニヤフ首相に停戦を要求した可能性が高く、ウクライナ戦争でもゼレンスキー大統領、プーチン大統領の双方に終戦に向けての様々な要求や条件を突き付けることになろう。

 一方、今になってもはっきりしないのが台湾政策だ。台湾では昨年5月、中国が独立勢力と位置付ける民進党の頼清徳氏が総統に就任したが、頼氏は中国の圧力に屈しない姿勢を前面に出し、中国は台湾本島を包囲するような大規模な軍事演習をすでに2回実施している。蔡英文前総統の8年間でそういった軍事演習は1回のみだったことから、中台を巡る軍事的緊張は現在の方が高いとも言えよう。

 そのような状況で、トランプ政権は台湾にどう関与してくるか、これについては安全保障専門家の間で2つの見解がある。

 1つは、台湾関与が低下するシナリオだ。バイデン政権は台湾を民主主義と権威主義の戦いの最前線と定義づけ、台湾への防衛支援を積極的に展開してきたが、トランプ氏は台湾が半導体産業を米国から奪った、台湾は防衛費をもっと増額するべきだと指摘するなど、台湾軽視の姿勢に転じる可能性がある。そうなれば、中国はその隙を突くように軍事的圧力をいっそう強めることが考えられ、中台間の緊張はいっそう高まることになる。

 もう1つの見方は、台湾問題を対中国の中で捉え、バイデン政権の台湾政策を継承するシナリオだ。トランプ氏は米国本土の安全を特に重視し、外国の紛争にはなるべく介入しない姿勢だが、国務長官に就任するマルコ・ルビオ氏は中国との戦略的競争において台湾重視の姿勢を強く示している。台湾が中国に支配されれば、それは同時に西太平洋で覇権を握る米国にとって深刻な脅威となることから、ルビオ氏はそのために台湾防衛の重要性をトランプ氏に訴える可能性が高い。

 今日、台湾はトランプ政権が上述2つのどちらの路線を取るか、その行方を注視している。

(北島豊)

ライフ