金正恩が韓国大統領“不在”の間に仕掛けるトランプ会談「第2ラウンド」

「プーチン大統領ととても早く会いたい。(終戦戦略については)プーチンにかかっている」

 1月13日、米メディアのインタビューに、そう答えたトランプ次期米大統領。

 トランプ氏は大統領選挙期間中にウクライナ戦争終戦のデッドラインを、24時間と明言。その後6カ月と期間を延長したものの、ノーベル平和賞を狙っているとされる同氏としては、この終戦が最大の課題。そのため武器支援等を打ち切ってでも戦争に終止符を打たせる構えだが、ウクライナ側がどのラインまで譲歩するかは未知数だ。

 そして、もう一つ「ノーベル平和賞」のチケットを手に入れるため、トランプ氏が画策しているといわれるのが、朝米対話の再開だ。

「トランプ氏は最近、北朝鮮関連業務を担当する特別任務担当特使にリチャード・グレネル氏を起用。さらに国家安全保障会議副補佐官に朝米交渉経験者であるアレックス・ウォン氏を任命しています。この人事を見るだけでも、トランプ氏が朝米対話再開に動くであろうことは明らか。ただ、トランプ氏、金正恩氏ともに、前回ハノイでの交渉決裂もあり、失敗を繰り返さないため、様々な形でのディールを模索していることは間違いないはずです」(国際部記者)

 第1次トランプ政権時の2017年、当初両者は「リトルロケットマン」と「老いぼれの狂人」と舌戦を繰り広げていたが、19年7月、トランプ氏が北朝鮮を電撃訪問。韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を挟んで正恩氏と握手を交わし、歩いて越境。北朝鮮に足を踏み入れた初の現職米大統領として、その快挙に全世界が驚愕したものだ。

 だが、その後北朝鮮の非核化を巡り、2人は決別。しかしその後も「ラブレター」と称する書簡外交がしばらく続いていたこともあり、大統領選挙期間もトランプ氏は「金正恩は非常に良い人で私が好きだ」と幾度となく持ち上げていたことも記憶に新しい。

「2人は決別したとはいえ、すでに3回も首脳会談を行い、それなりの個人的関係を構築している。そうなれば前回の轍を踏まないよう、北朝鮮の短期間での完全非核化から核凍結と軍縮といった交渉に舵を切る、あるいは米国本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)だけを放棄させ、対北朝鮮制裁を解除するなどの奇策に出る可能性も捨てきれない。韓国の大統領が不在の中、そんな直接交渉が2国間で行われたら、それこそ韓国にとっては最悪のシナリオになり、朝鮮半島の安全保障環境を大きく揺さぶられることは間違いありません」(同)

 実は、今年に入ってからの北朝鮮のミサイル発射にも、次期政権を見据えた北朝鮮側の戦略がみられる、という専門家も少なくない。

 というのも、北朝鮮は1月6日に発射したのは、中距離の新型極超音速ミサイルだった。同国が米本土に届くICBMを数種類保有していることは既存の事実。つまり、北朝鮮はそれを意図的に使わなかったことに、トランプ政権への配慮が見られるというのである。

「14日に発射したミサイルに関し、北朝鮮はなにも言及もしていませんが、おそらくはトランプ2.0時代を控え、実行戦略を意図的に留保し、韓国や日本を攻撃する能力を見せつけながら、米国を過度に刺激しないよう調節しているのではないかと。もしトランプ氏が再び訪朝するようなことになれば、日米韓の関係にも変化が現れる可能性もある。予断は許されない状況にあることはまちがいありませんね」(同)

 果たして交渉再開の行方は…。

(灯倫太郎)

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