金正恩が軍事パレードでまた涙…「演技か自己陶酔か」裏の意図めぐり侃々諤々

 独裁者ヒトラーは演説の最中、自己陶酔のあまり度々涙を流していたとされるが、この人も同じタイプなのか。先月27日、戦争停戦協定締結70周年における軍事パレードに参列した北朝鮮の金正恩総書記が、国歌斉唱の際、人目をはばかることなく涙を流したことが波紋を広げている。

 北朝鮮国営の朝鮮中央通信によれば、正恩氏は同夜、ロシアのショイグ国防相や、中国共産党の李鴻忠委員長らと共に、平壌の金日成広場で開かれた「戦勝節」記念軍事パレードに出席。自らショイグ、李両氏へ兵器の機能などについて説明していたという。

「正恩氏が涙を流したのは、パレードに先立ち北朝鮮国歌が流れた時です。突然込み上げてきたのか、眼を閉じたまま涙を流すシーンが映像でも確認できます。正恩氏はこれまでも幾度となく公式行事で涙を流してきましたが、それが自己陶酔からくるものなのか、あるいはなんらかの意図があっての演出なのか、正恩氏の涙を巡り韓国メディアではさまざまな分析がなされています」(外信部記者)

 正恩氏の号泣シーンとして有名なのが、2020年10月の労働党創建75周年に開催された演説での一場面だ。この時は自然災害復旧に勤しむ首都党員師団に言及し「申し訳ない」と謝罪しながら涙を流し、眼鏡を外してハンカチで涙を拭いたあと、涙声で国民に向かって「災害を克服しよう」と呼びかけたことが朝鮮中央通信で大々的に報じられ話題なった。

「この時の演説では、国民の献身について『感涙せずにはいられない』と声を震わせ、涙をぬぐったハンカチを演台に置くと、眼鏡をかけ直すしぐさを見せています。北朝鮮の国民はこのシーンに胸を打たれたようですが、韓国の専門家の見方は違う。正恩氏が涙を流す際は必ず演台に前もってハンカチが置かれていることから、国民の心を惹きつけるための演出ではないか、と見ています。仮に、自分の演説に自己陶酔し感情があふれて自然と涙が出てきたとしても、それを含めて正恩氏の演出と考えていいのかもしれません」(同)

 ヒトラーをはじめ、独裁者にはナルシストで自己陶酔型が多いとされ、正恩氏のその1人であることは間違いないだろう。そんな自己陶酔型の人が武器として使うのが「涙」だが、彼らは人心を鼓舞するため、あるいは同情を誘うために自在に泣いて見せる。

「涙を流すことで相手の気持ちをコントロールしているという見方もできます。国民のことをここまで思っているんだという姿をアピールし、忠誠心を高めようとする思惑が見え隠れします」(同)
 
 食糧危機にあえぐ北朝鮮人民の不満をかわす目的もあったのかもしれない。

(灯倫太郎)

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