グリーンランドに中国・ロシア寄りの独立国家が誕生!?トランプ氏が領有を急ぐ「真の動機」

 トランプ次期米大統領があらためて領有意欲を示したことで、北極海と北大西洋の間にある世界最大の島、グリーンランドが世界の注目を集めている。

 グリーンランドはデンマーク領で、領土の8割は凍土に覆われている。意外なようだが、日本とも様々な点で深い関係にある。

 例えば冒険家の植村直己氏だ。70年代、同氏はグリーンランドからカナダ、アラスカまで北極圏1万2000キロを単独犬ぞりで走破し、世界の冒険家としての地位を不動のものにした。その植村氏が、犬ぞりや寒さとの戦いを一から学んだのが、グリーンランドでのエスキモーとの生活だったといわれる。現在では、日本はグリーンランドから甘エビや魚介類を輸入している。

 そんなグリーンランドに、なぜトランプ氏は執着するのか。政経アナリストが言う。

「グリーンランドは最近、スマートフォンやEV自動車に欠かせないレアアースの世界最大級の宝庫ということがわかりました。また、石油や天然ガスの埋蔵量も世界トップクラスと見られています。そのため、中国などが、あの手この手でグリーンランドの採掘権を確保しようと躍起なのです」

 埋蔵資源だけではない。アメリカにとってグリーンランドが重要なのは、ロシアを監視する軍事拠点を同島に置いていることだ。ロシアと北アメリカ大陸はグリーンランドを挟む形でほぼ対峙する。アメリカ、ロシアは、ともに大陸間弾道ミサイル(ICBM)で牽制しあっており、そのため、アメリカはデンマークと協定を結び、グリーンランドに米軍基地を置いているのだ。自衛隊関係者が言う。

「グリーンランド周辺の海には、ロシア、中国の原子力潜水艦がウヨウヨしています。さらに、グリーンランドの先住民が、デンマークからの独立を唱えはじめていて、場合によっては中国、ロシア寄りの独立国家が誕生する可能性もある。そうなったら、アメリカにとって悪夢です。そこでトランプ氏は、同島を自国のものにしようと考えたのでしょう。もちろん、観測気球的な発言という見方もありますが、一方で、コトを急がなければならない兆候がロシアと中国に見え始めているのでは、という指摘もあるのです」

 デンマークのフレデリクセン首相は、近くトランプ氏と会談する意向を示している。グリーンランドの地政学的リスクは、アメリカだけでなく、日本にとっても重要な問題と言えるのだ。

(田村建光)

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