地球温暖化ストップに待ったなし。一方、どんな合意がもたらされるかで世界経済に多大な影響を与えるということで、いまや世界中が固唾を飲んでその趨勢を見守るようになった「国連気候変動枠組条約締結国会議」。今回は26回目の開催なのでCOP26と呼ばれている。
「COP26で最大の焦点となったのは石炭の扱いでした。会期を1日延長した13日の午前には石炭を『段階的に廃止』するという文言に中国とインドが猛反発。最終的に『段階的に削減』と表現を緩めることでようやく合意が採択されました」(経済ジャーナリスト)
2020年の日本の電源構成では、LNG(液化天然ガス)の約35%に石炭の約28%が続いて石炭への依存度は高い。なので日本の関係者は胸をなでおろしたことだろう。だがCOP26では日本が「化石賞」を受賞するという不名誉を被り、国内外からの圧力は今後も高まるのは必至で、関係者のやきもきは続くだろう。特に目の敵とされるのが輸出大国・日本の屋台骨を支える自動車業界だ。言うまでもなく、自動車は作るのにもCO2を排出し、出来上がった製品もCO2を排出するからだ。
そこで電気自動車(EV)への転換を迫られ、各社もそれなりの努力を行っているのだが、単純なEV化には困惑が伺われる。
「例えばマツダの丸本明社長は石炭が電力構成で高い環境下でEV車を増やしても…と言い、スズキの鈴木俊宏社長も充電インフラを含めた政策が必要とし、なんとも腑に落ちていない発言をしています。国際的な同調圧力に納得がいかないというのが本音でしょうね。というのも確かにEV化は大きな手立ての1つでしょうが、実はEVはそんなに有効打でないという調査結果も出ているからです。ヨーロッパでは世界の中でも最もEV化が進んでいますが、結局はその国の電源構成次第で、結果的に排出されたCO2量はEVの方が多かったなんて国もありました。また、再生可能エネルギーに積極的な国でも、電力の貯蔵設備が不足しているので、例えば太陽光で発電ができない夜に充電するとなると削減効果は大きく低下するというのです」(前出・ジャーナリスト)
まさに2人の社長の発言はこの調査結果を裏付ける“本音”だったのだろうが、同調圧力がかかると自由な言論は封殺されるもの。
「自動車に関しては主要市場で35年まで、全世界で40年までにエンジン車の販売を終了させるという宣言も採択されましたが、これには国やメーカーの商売的思惑が明らかに絡んでいます。自動車の販売台数が多くて主要産業でもある日本やアメリカ、中国、ドイツは国として賛成しませんでしたが、アメリカではゼネラル・モーターズやドイツではメルセデス・ベンツなどがメーカーとして独自に賛成。新たなルール作りで業界内のポジションを優位にするといった計算が見え隠れします」(経済誌編集者)
それぞれの国の内情や関係業界のビジネスの内情が透けて見えるCOP。必ずしもクリーンな面ばかりではないようだ。
(猫間滋)