ロシアによるウクライナ侵攻を他の西側諸国同様に非難し、制裁措置にも加わってきた韓国。だが、ウクライナへ「殺傷兵器」を送る米国や欧州各国とは一線を画し、韓国の支援物資は、医薬品や戦闘用食糧、防弾ヘルメットなどに留まっていた。
プーチン大統領もこうした韓国の動きを注視していたのか、6月5日にサンクトペテルブルクで行われた各国メディアの取材に対し、次のように発言している。
「韓国が(ウクライナ)紛争地域に武器を直接供給しない決定を高く評価する。両国関係の発展に関心があり、われわれ側ではチャンネルが開かれており、協力を続ける準備ができている」
韓国に謝意を述べる一方で、今後も武器供与をしないよう、クギを刺した形だ。
ところが、この発言からわずか2週間後の19日、周知のようにプーチン氏は北朝鮮を電撃訪問した。しかも、北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだことを金正恩総書記とともに発表し、その条約には、「朝鮮半島有事の際にはロシアがためらうことなく直ちにあらゆる手段を用いて軍事的及びその他の援助を提供する」との文言が明記されていたことが明らかになった。当然ながら、韓国は猛反発だ。
「事実上の『軍事条約』とも言える内容に、韓国大統領室は『ウクライナへの武器支援問題を再検討する』との方針を明らかにすると同時に、翌21日には韓国外交部が、ロシアのジノビエフ駐韓大使を呼び、激しく抗議したと伝えられました」(国際部記者)
では、そんな韓国はロシアに対し、今後どのような動きを見せるのか。
「対露経済制裁や、NATO軍との軍事協力の強化でしょう。他にも、ウクライナに対する直接的で段階的な殺傷用兵器の供与もあるとみられています。韓国情報筋によれば、まずは防空システムなど防衛用兵器を供与し、その後も露朝が危険水域に進むようであれば、殺傷用兵器供与に移行するといいます」(前出・記者)
そんな韓国側の怒りを感じたのか、プーチン氏は北朝鮮の後に訪れたベトナムでの記者会見で、「韓国がウクライナに殺傷武器を支援すれば、われわれは相応の決定を下すことになり、それは韓国の現指導部にとっては快く思わない決定となるだろう」と、韓国を強く牽制している。
大国の力でねじ伏せようとするかのようなロシアと、ブチギレ状態の韓国。ウクライナ戦争をめぐる新たな火種から眼が離せない。
(灯倫太郎)