ウクライナ東部最大の激戦地バフムトで今、ロシア軍兵士を震撼させているウクライナ兵士がいるという。
超腕利きの「スナイパー軍団」がそれで、通称「バフムトの幽霊」と呼ばれている。深夜に活動し、まったく見えない場所から、何の音も出さずにロシア軍兵士を次々と「狩る」ことから、こう名付けられた。
英BBCによれば、「バフムトの幽霊」は、狙撃の腕を買われた20人ほどの最精鋭チームで、6カ月ほど前から、バフムトとその周辺で夜間作戦を展開。驚異的な確率で相手を仕留めることから、ロシア軍兵士の間で現在、最も恐れられている存在なのだという。
これまで精鋭チームが射殺したロシア軍兵士は524人。うち76人はチームの指揮官1人で行ったという。
「報道によれば、彼らの1日は日没に装甲車に乗るところから始まり、まず目的地から約1マイル(約1.6キロ)離れた場所まで移動。その後は徒歩で『狩り』に出て、ターゲットを探し、任務を遂行し、未明に基地に戻る。ただ、彼らを乗せた装甲車が走るのは、地雷だらけの舗装されていない道路。BBCでは隊員らが出動前、十字架を切り、自分と仲間が無事に戻れるよう祈る映像を公開しました。敵地まで1マイルとはいえ、むろん見つかれば、総攻撃を受けてしまう。精神的にも肉体的にも、非常に過酷な任務です」(軍事ジャーナリスト)
BBCのインタビューに応じた「クジア」というコールサインを持つ狙撃手は「1つの狙撃チームだけでバフムトを取り戻せないことは知っているが、それでも戦争に影響を及ぼしていると信じる」とした上で、「ミスすれば敵の逆襲を受ける。私たちは人間を殺すのではなく、敵を破壊している」と自身の任務を冷静に分析している。この半年の間、メンバーの多くが傷を負ったが、犠牲者が1人も出なかったことは奇跡だとして、バフムトの幽霊のメンバーに必要なのは、スキルや経験よりも、人間愛と愛国心が重要な要素だと語った。
実は、ウクライナには以前から卓越した狙撃手が数多くいるとされ、
「昨年11月にウクライナの国家警備隊が発表した報道資料によれば、同国の特殊部隊に所属するスナイパーが、2710メートル先にいたロシア兵を射殺することに成功。同軍が『世界狙撃距離歴代2位に達する記録』だと伝え、大きな話題になったこともあります」(前出・ジャーナリスト)
英紙ザ・サンなどによると、現在、世界の狙撃距離1位を保持するのは、2017年に武装勢力・イスラム国の主要標的を狙い、3450メートルの距離から命中させたカナダ合同作戦軍(JFT)。2位は2009年にアフガニスタン戦闘で、2475メートルの距離からタリバン兵2人を狙撃した英国人狙撃手とされていたが、今回の狙撃距離が事実であれば、ウクライナ軍狙撃手が2位の記録を塗り替えたことになる。
2キロ以上も先から狙われたのではロシア兵もなすすべがないだろう。まさに「ゴルゴ13」も真っ青なスナイパー集団なのである。
(灯倫太郎)